――生瀬さんは、役者生活としてはもう30年以上になりますけど、ずっと続けてこられた理由は何だと思いますか?
ただ単に好きだからですね。演じることが好きだから。たぶんこういうお仕事は、僕には合っているのだと思います。本当にこのお仕事で良かったです。
――ハルさんが劇中で「人形作家というお仕事は大変だけど、やりがいがあって楽しい」と言っているシーンがありましたよね。
まさにそうですね。それは、すごく共感できました。お金うんぬんじゃなくて。もちろん僕は、小劇場出身ですから、自分の好きなことをやって、それが対価としてもらえるなんてことはあり得なかったんですよ。それが、こういうお仕事をして、ギャランティーが頂けるっていうことは、もう、ご褒美みたいな感じなんです。“対価”じゃなくて“ご褒美”なんですよ。でも、ハルさんの人形を作りたいっていう気持ちは、ものすごく僕よりたぶんピュアだと思うんです。やりがいがあるという気持ち、分かります。自分が作るんだっていう気持ちですよね。
――特にそのやりがい、というのはどういう瞬間に感じますか?
私はやっぱり、もちろん褒めていただければうれしいですし、「面白かったよ」「笑ったよ」とか、「あのキャラクター良かったね」って言われることでしょうね。自分で自分の作品を見てうんぬん考えることはあります。できなかったこととか、「ああ、ちゃんと自分の思い通りにできたな」とか。でもそれは結局、自分の価値観だから、やっぱり第三者の人に、信頼できる人に褒めてもらうことが、一番自分にとっての達成感となりますね。
――これも劇中のセリフですが、俳優というお仕事も「自分の居場所だな」という感覚はありますか?
あります。他の職業はちょっと(考えられない)。お仕事がなくなったら僕はいろいろ探すかもしれないですけど、今のところはこのお仕事をさせていただけるのに越したことはないですね。
――この先、他にやってみたいことはありますか?
それがないんですよ。やってみたいことはない。自分がやりたいって思うことは全然なくて、「やってもらいたい」って言われたい。「この役をやってもらえないか」って言われることが、たぶん僕にとっての一番うれしいことなんです。
――人のために演じたいということですか?
自分がもし何かやりたいと思うんだったら、自分で(脚本を)書いて、演出して、やるしかないと思うんで。例えば僕が「漁師の役をやりたいです」って言って、それは誰に言えばいいのかっていう。
「今度、どういう役をやりたい!」っていうのは、ないですね。例えば言ったとして、それに応えていただけるんですか?って話ですよ(笑)。
――あるかもしれないじゃないですか(笑)。
いやもう、別にいいです、いいです(笑)。例えば、シェークスピアの「ハムレット」を演じたいとか、既成の台本とか、そういうものがあるのなら別ですけど、そんなのはないですし。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)