「美の壺」と「びじゅチューン!」がコラボ!井上涼『お互いの力を出し切っています』

2017/12/26 19:25 配信

芸能一般 インタビュー

特番で身に着けていた着物は「苦しかった」とぽつり(C)NHK


私の半生は「紅白梅図屏風グラフ」


――特番では、和の美術をモチーフにした「びじゅチューン!」の作品がたくさん登場しますが、特に思い入れのある作品はどれですか?

全部に思い入れがあるんですけど、「紅白梅図屏風グラフ」という作品は、世の中の“若いとはもう呼べない”年代の人々に元気になってほしくて作った歌でもあるんです。

尾形光琳の実際の作品もすごく力強くて、それを受けた印象を基に作った曲が応援歌のようになったんです。特番の放送の次の日からお仕事の方も多いと思うので、少しでも皆さんが元気になってくれたいいなと思います…なーんて!(笑)

――「紅白梅図屏風グラフ」は、アイドルとしてデビューした女性の芸能人生の浮き沈みを、グラフに見立てて表現した作品ですよね。

金箔の格子模様がグラフ用紙に見えて、そこに書いてある曲線がグラフっぽいなと思ったんですよね。

――そういった絵の印象から、曲を作り始めることが多いんですか?

そうですね。いつも、ぱっと見の印象を大事に作るようにと心掛けています。

というのも、美術に対して抵抗感や、距離を感じている人が日本にはとても多いようなんですね。

そういう人たちがこの番組を見て「あ、紅白梅図屏風のことをグラフって言っていいんだ」と分かってもらえたら、美術に親しみを持ってほしいという番組の目的を果たせるかなと思っています。

井上の正月の過ごし方は「実家で父と母の小競り合いを仲裁する」だという


金曜日の金屏風の前でキンキラ逃避行


――ほかにも印象的な作品はありますか?

あ、「風神雷神図屏風デート」とか。この絵は、歴史の中でいろんな人が描いているんですが、中でも俵屋宗達が描いたものをモチーフにしています。

屏風の端と端に、収まりきらないくらいの大きさの、風神と雷神が描かれていて、真ん中に余白を持たせてある構図になっているんですが、描かれている風神と雷神がお互いを見詰めている様子が、デートの待ち合わせで駆け寄っているように見えたんです。

それで、デートの曲にしようと決めたんですが、実は2回ぐらい作り直したんですよ。最初は私がちょっと子ども寄りに擬音語を入れた曲作っていたんですが、チーフプロデューサーの倉森(京子)さんに「子どもっぽい」って言われたんです。それで、全く子どもを意識せずに、「表向きは仕事仲間で、隠れてデートしている」っていう設定にしたんです(笑)。

視聴者の方に「(美術作品を)どんなふうに見てもいいんだ!」と思ってもらうにはいい作品なのかなと思いますね。

それに、番組の中で草刈さんがちょっと口ずさんで歌ってくれる場面もあるので、作って良かったなと思いました。

――「びじゅチューン!」は4周年ですが、番組内で美術をいろんな形で紹介してきて、井上さん自身と美術の距離感が近づいたと感じますか?

近づいたとも思います。でも、「よし! これで美術のことが分かったぞ!」と思ってしまうには、全部の作品の奥が深いので、美術は今でもつかず離れずの友達っていう感じです。

作品に込められた背景の深さにおののきまくる4年間でした…美術にはやっぱり敬意を払うべきですし、誰かが作った美術作品に、自分なりの歌を作るということには勇気がいりますね。「なんか過去、すごくな~い?」って毎回思います(笑)。

そういうことに慣れてくるのかなと思いきや、そうはならない厳しさを感じています。

――では最後に、特番の中で「やり残したこと」はありましたか?

演技力がもうちょっとあればな…とは思いましたけど(笑)。

でもできることはやったなという気がします。草刈さんとの共演なんてそんな機会めったにないですし。

美の壺」も「びじゅチューン!」も力を出し切っている感じがあって、お互いの良さがすごく出ている番組に仕上がったと思います!

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