1月12日(金)より放送を開始するアニメ「BEATLESS」(MBS・TBS系)。放送に先駆け、ヒロイン・レイシアの声を担当する声優・東山奈央に、自身の役どころ、作品の見どころなどを聞いた。
「BEATLESS」は、社会のほとんどをhIEと呼ばれるアンドロイドに任せた近未来世界を舞台にしたSFバトルアニメーション。長谷敏司の同名小説(KADOKAWA)を原作に敷き、アニメ化を手掛けるのは「機動戦士ガンダム00」(2007年、MBS・TBS系)、「楽園追放」(2014年、劇場映画)など多くのヒット作を送り出している監督・水島精二。
17歳の少年・遠藤アラトは、とある事件を機にアンドロイドの少女レイシアとオーナー契約を結ぶ事になるが、それはやがて世界を巻き込んだ大きな戦いへとつながっていく。
――原作小説は読まれたとのことですが、その感想からお聞かせください。
最初に原作を手にした時「あ、分厚いやつだ」という印象でした。文字がびっしりで、ちょっとした辞書のような本だったので、一度開いて、そっと閉じました。台本以外の文字慣れをしていないので、一度落ち着こうって(笑)。それからじっくり読ませていただいたんですが、SFの面白さあり、考えさせられる哲学的な面白さありで、どんどん引き込まれていきました。
今私たちが生きている世界のおよそ百年後を舞台にした作品で、現代の状況って、この「BEATLESS」の世界観に向かっている過渡期なのではという気持になるくらい身近なお話だと感じました。自分を主人公のアラトくんに置き換えて、「自分だったらhIEが存在するこの世界でどう生きていくのかな」と考え込む場面もありました。用語に疎い私は、「デバイス? インタフェイス?」って首を傾げたりもしたんですが、皆さんならきっと大丈夫だと思います。
――小説は確かに難しい雰囲気がありますが、アニメにすることで大分ほぐされて、見やすくなると思います。文章表現だったガジェットも視覚的に分かりますし。
そうですね。未来ならではの道具――ゴーグルで視界に色々表示されたり、家電が全部自動で反応して動きだしたり。今も似たようなものはありますけど、「BEATLESS」の世界ではそれがもっと未来感のある形で描かれていて、そういうのも好きな方にはたまらないポイントだと思います。私も早く放送を見たいなってワクワクしています。
――東山さんが演じられるレイシアはどういうキャラクターですか?
レイシアは見た目とても透明感のある美少女なんですが、人ではなく“モノ”――hIEというアンドロイドです。「BEATLESS」は、このhIEが当たり前のように社会に混ざり合っている世界。その中でもレイシアは最高級品の“人類未到産物”と呼ばれる、とても高い知能(AI)を持ったhIEで、見た目だけでなく、喋る言葉も仕草も人間そのものという少女です。感情豊かというわけはないんですが、無機質というわけでもない。人間らしい温かみを出してくることもあって、ほだされそうなくらい可愛い時もある。でも、やっぱりそれはAIによるものなんです。
「どっちなんだよ!?」って思われるかもしれないですけど(苦笑)、レイシアはそれだけ人間に近いアンドロイドなんです。本当に心があるんじゃないのかと錯覚させられるくらいで、きっと皆さんにもそういう感情が芽生えると思います。作中ではその現象を“アナログハック”と表現していて、皆さんもレイシアの魅力にアナログハックされそうになる瞬間が多々あると思います。
――主人公のアラトとは、物語でどんな役割りを担うのですか?
社会にはhIEの存在を快く思われない人もいて、hIEを無差別に破壊しまくっている組織もあります。そうでなくも、人はhIEを完全にモノとして見ていて、そこに特別な感情は持っていないのが普通です。でもアラトはhIEに対して友好的というか、モノではなく人と変わりなく接する少年なんです。
働いているhIEを見て「頑張ってるね」って思ったり、人助けをしているhIEを見て「自分も人助けをしなきゃ」って思う心の優しさを持っています。そんなアラトがレイシアと出会い、「自分には魂はありません」と主張を繰り返すレイシアへの接し方に葛藤を覚えていく。この2人の関係が他のhIEや周りの人たちにも影響を与え、世界を巻き込んでいく大きな波乱を生むことになっていきます。
――2人を中心とした人とモノの関係が大きなポイントですね。
SFの場合、「ロボットに心は宿るのか?」というのは普遍的なテーマだと思うんです。AIが意思となり、意思が感情を生んで、いつしか人間と変わらない感情が芽生えるようになる。そういうふうに捉えていく作品と、どんなに高度な知能を持っていても、やっぱり機械は機械であるという姿勢を貫く作品。その他にも色んな示し方をした作品がたくさんあって、ものすごく哲学的なテーマでもあると思うんです。
そういった中でこの「BEATLESS」が最終回を迎える時、皆さんにどういう結論を提示するのか。見ていくうちに心があっちへこっちへと揺れていくと思うので、色々想像しながら楽しんでもらいたいと思います。
――東山さんはアニメのキャストとして番組に携わる側ですが、普段はどんな番組を見られているのですか?
最近は「ラストアイドル」(毎週土曜夜0:05-0:30、テレビ朝日系)を毎週拝見させていただいております。すごい番組ですよね。最初の頃は時間がなくて見られなかったんですが、今はとても注目しています。私も歌とダンスでステージに立つお仕事をさせてもらってますが、どういった事が大切になるのか都度悩むことがあるんです。
そんな時に「ラストアイドル」を見て、はっとさせられました。表現者として何が大事なのかを教えてもらえる番組だと気づいてからは毎週見るようになり、とても刺激を受けています。
歌の上手さ、ダンスの技術だけでなく、見る人を楽しませたいという情熱が大事なんだって。でも時にはそれだけでは駄目で、その日のためにどれだけの準備をすることができたのかなど。そういう初心を思い出させてくれる出演者たちの姿に、ものすごく心を打たれました。悲喜こもごもありますけど、同じ表現者として学ばされるものが多いなって思いながら見ています。
――2018年が始まりましたが、今年はどんな年にしたいですか?
心を育てる年にしたいです。2017年は声優業の他、新しく歌手活動を始める機会を頂き、そこでたくさんの事を学びました。お仕事を始めて8年目になりますが、今また新しい事ができるというのには感謝しかなく、実りも多いです。一方でいっぱいいっぱいになった自分がいたんですね。
来年はそれを糧にして、もっと心を育てる年にしたいんです。技術的な事はもちろんですけど、表現者として、もっと自分を磨いていきたい。人から見える部分だけでなく、見えない部分も育てていきたいと思っています。
――最後に改めて、「BEATLESS」の放送を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。
考えれば考えるほど色んな思いが浮かんでくる作品で、他の方とお話しすると、また違う考えがある事を知る作品でもあります。私たちとはまったく無関係ではない世界軸での物語なので、皆さんも色んな感情が湧き上がってくることでしょう。
「BEATLESS」が描く世界は、今後私たちの世界が向かう可能性のある1つの形だと思います。アラトとレイシアがどんな生き方を選ぶのか、ぜひ一緒に見守っていただけたら嬉しいです。
文:鈴木康道
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)