―― 一方、日曜夜8時のゴールデン番組「世界の果てまでイッテQ!」も担当されていますね。
「『イッテQ!』は、完全に“ディレクターショー”というか、それぞれの企画が、各ディレクターの“作品”のようなもので。僕ら作家は、アイデアを出したりする介添人のような立場なんです。とにかく、よくもまぁこれだけ豪腕のディレクターがそろったなと思いますし、彼らを束ねる(企画・演出の)古立(善之)くんの優れた手腕があればこその番組ですよね」
――「イッテQ!」は、放送10周年を迎えてなお20%前後の高視聴率を誇っています。その人気の秘密は?
「古立くんも、『電波少年』のADからキャリアがスタートしてるんですよ。そう考えると、『元気が出るテレビ!!』、『電波少年』と脈々と受け継がれてきた“日本テレビのロケバラエティー”の優秀なDNAが、彼が作る『イッテQ!』にもしっかりと組み込まれている。そのDNAに則りながらも、古立くん独自の今の感性がプラスされているから、誰が見ても面白い番組になっているんだと思います。
番組が始まるときに古立くんが言ってたのは、『今までのロケバラエティー、ドキュメントバラエティーでは、目的地に向かう途中に山があったら、その山を越える努力の様子を描いていた。でも、この番組では、そんな努力は要らないんだ』と。『山を迂回してでもいいから、目的地に着いたところからさっさと本編を始めたい』と言うんですよ。その言葉を聞いたときに、この感性は新しいなと思いましたし、実際『イッテQ!』って、まさにその通りの番組じゃないですか。番組の中で、出川哲朗さんがよく『8時間かかったロケを3分に編集する。ここのスタッフは頭おかしい!』って言ってますけど、ある意味、その通りなんですよ(笑)。途中経過は端折って、一番面白い部分だけをポンポン見せていくテンポ感とか、不純物を取り去って面白さの上澄みの一番搾りの部分だけをすくい取っていく感じが、たくさんの人に見てもらえている理由なのかなと思いますね」
――では最後に、これまでさまざまな番組に携わってきた鮫肌さんから見た、今後のテレビ界、バラエティー界の“未来”は?
「コンプライアンスというものがどんどん重視されていく中で、テレビ局の自主規制もきつくなってきているのは確かですけど、そのせいでテレビが面白くなくなったとは僕は思わないんですよ。それはたぶん僕だけじゃなくて、少なくとも、バラエティーの制作現場の最前線で働いている人間は全然そんなふうには考えてない。特に放送作家はみんなドMだから(笑)、禁止事項が多くなればなるほど逆に燃えるんですよね。いかに規制をかいくぐって面白いことを考えつくかが勝負ですから。その意味では、オーディションバラエティーにしろロケバラエティーにしろ、歌番組だって旅番組だって、トーク番組だって、今まで誰もやったことのない新しいテレビ番組の形は、きっとまだまだあるはずだと思うし。できれば、それを僕が見つけられたらいいんですけどね」
――ちなみに鮫肌さんは、どんなタイプの人間が放送作家に向いていると思われますか?
「いい意味でこだわりのない人、ですかね。例えば、自分がものすごく面白いと思う企画を会議でプレゼンして、みんなで話し合ううちに、それが全然違う方向に行ったとしても、そっちの方が面白かったら、そこに乗っからなきゃダメなんです。むきになって自分の考えを貫こうとしたり、逆に『だったら、この企画は取り下げます』とか言うような頑固なタイプの人は、映画監督とか小説家とか、自分で全部決められる仕事に就いたほうがいい。放送作家という仕事は、“アイデアのサービス業”ですから」
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