【テレビの開拓者たち / 小仲正重】林修、坂上忍との出会いがテレビマンとしての転機に

2018/01/27 22:00 配信

芸能一般

スタジオで解説している林修先生を見た瞬間、ビシビシ感じるものがありました


世界の偉人に関する問題や国際的な時事問題などの常識クイズに挑戦する「世界ドメジャーリーグ」といった新企画が続々登場している「ネプリーグ」(フジ系)©フジテレビ


──そして2012年には、「ネプリーグ」のプロデューサーに就任されました。

「『ネプリーグ』のプロデューサーに、という話があったときは、自分としては、これからディレクターとしてひと花咲かせたいという思いが強かったので、実は最初、ちょっと抵抗したんです。でも当時の上司から、『プロデューサーをやりながらディレクターもやればいいじゃない』とうまく言いくるめられまして(笑)。ただ、今にして思えば、既に確立されていた『ネプリーグ』という番組を活性化させるというか、何か新しい展開を、ということで、僕に声が掛かったのかもしれませんね」

──翌年からは、当時「いつやるか? 今でしょ!」という東進ハイスクールのCMで注目を集め始めていた林修先生が、「ネプリーグ」にレギュラー入りします。

「ある回の収録で、インテリチームの1人として出演する予定だった方が、前日になって突然キャンセルになってしまって。どうしようかとみんなで話している中で、誰かが『CMで“今でしょ!”って言ってるあの先生はどうですか?』と言い出したんですね。それでダメ元でお願いしてみたら、二つ返事で即OKをいただけたんです。番組では、黒板を使って漢字の成り立ちについて解説をしてもらったんですが、その瞬間、ビシビシ感じるものがあったというか、とにかく『この先生はすごい!』と。その収録の後、すぐに楽屋まで行って、今後レギュラーで出演いただけないかとお願いしました」

――林先生の加入は、まさしく『ネプリーグ』に“新しい展開”をもたらすことになったのでは?

「そうですね。“クイズ+学問”という今の番組の2本柱ができたのは、林先生の加入がきっかけですから。その意味では、林先生が番組に新しい風を吹き込んでくれたのかなと。偶然の成り行きではあっても、“見つけた逸材は逃さない”ということは、プロデューサーの大事な役目の一つなんだと痛感しました。

林先生には、その後『全力教室』(2013~2014年)にも出ていただいたんですよ。『林先生は落ちこぼれをやる気にさせることができるのか?』というテーマで、いわゆるヤンキーの若者たちの前で授業をしてもらいました。最初はみんな、先生の話を聞く雰囲気じゃなかったんですけど、途中から林先生が、用意してきたものを全部捨てて、ヤンキーの子たちと丸裸で対話するようにしゃべり始めたんですよ。『勉強はできなくていいけど、考える能力は絶対に持ってなきゃダメだ。ここは譲らんぞ!』と、予備校の講師ではなく、“人間・林修”として熱く語り始めた。すると、だんだん生徒たちの表情が変わってきて、林先生の話を食い入るように聞くようになって。あれは、僕らスタッフも手に汗握るような、本当にすごい授業でしたね。視聴率も、それまでずっとひとケタだったのが、その回は12%を超えたんです。僕自身が面白いと思ったことは世間も面白いと思ってくれるんだ、という自信にもつながりました。

『全力教室』といえば、坂上忍さんと初めてお仕事したのも、この番組なんです。なかなか芽が出ない子役とそのお母さんたちに授業をするという企画だったんですが、坂上さんは授業の最後に、1人の子役の男の子だけを残して、1対1で話し始めて。『お芝居が本当に好きなのか』『楽しんで演じているか』と、徹底的にその子の本心を引き出していったんです。これも、『全力教室』の中では特に思い出深い回ですね」

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