大江千里、新アルバムで「グラミー賞」狙う【インタビュー後編】

2018/02/04 11:00 配信

音楽 インタビュー

大江千里が最新著作「ブルックリンでジャズを耕す 52歳から始めるひとりビジネス」を発表撮影:奥西淳二

これからの大江千里、読者・後進へのメッセージ


――2018年はデビュー35周年の年でもあります。2017年の決意表明は「心の赴くままに生きる」だったと本にありますが、2018年のテーマは?

「今年も心の赴くままに生きつつ、ピアノソロアルバムを作るという具体的な目標があります。僕はジャズのソロアルバムを作りたいという夢がずっとあって。その中に、小さな単音に少しだけ音を加えたようなミニマムなものから、ビッグバンドみたいなものまで揃えて、一本のピアノで10本の指で奏でてみたいっていう思いが強かったので」

――どんなアルバムになるのでしょうか。

「今まで出してきた4枚のアルバムとはまったく違うアプローチになります。ジャズであるという立脚点を失わず、小さい頃にクラシックをやり、ポップを長いことやってきた自分のいい部分、チャーミングな部分をジャズというフィールドの中にしっかり根付かせたい。ちゃんとオーガニックに響くように接ぎ木をして、いま育てているところです。このあとNYに帰ったら、2月にレコーディングをします」

――リリースはいつ頃の予定ですか?

「まずこれから製作と同時にPRに頼んで、どうプロモーションしていくかを練っていきます。次はいろいろ経験した上での5枚目なので、西海岸と東海岸でPRの手法を変えてみたいし、Radioチャートにも食い込みたい。今、各地のジャズラジオで僕の音楽を流してもらえるようになってきているから、次はラジオ局と組んで面白いことをやれたら素敵じゃない?とか(笑)。チャンスがあればなんでもやっちゃおう!という感じなので、時間はちょっとかかると思います。とはいえグラミー選考の締め切りが9月なので、それまでには出したいですね」

――日本でのキャリアを手放し、NYでゼロからスタートをきった大江千里さんの生き方は、書籍や音楽を通して大きな勇気をくれますが、今これを読んでくれている、夢に向かうwebザテレビジョンの読者にメッセージをいただけますか。

「僕はシンガー・ソングライターでデビューしたときに、爆発的に売れたきっかけはテレビドラマ(『法医学教室の午後』/1985年、『君が嘘をついた』/1988年)に役者として出演したことだったんです。本来であれば、作詞作曲して歌うことに集中すべきときに、テレビドラマという音楽とは関係ないところでサウナに入って倒れるシーンを撮ったり(笑)ラブストーリーで“メリークリスマス!”なんてやっていた」

――当時、「週刊ザテレビジョン」の表紙やインタビューページにたびたびご登場いただきました。

「でもそれがあったおかげで、『Sloppy Joe』(1989年)というベストアルバムが幅広い人たちに聴いていただけたんですよね。そしてドラマがきっかけで僕を知ってくれた方が今も僕の音楽を愛してくれて、ジャズを聴いてくださったりする。だから人生というのは、『僕は私はこうなんだ』と決め付けずに、やりがいのあるチャンスが来たら、自分が納得して責任を持って食らいつくといいと思うんです。そのとき右じゃなくて左に行っても、ぐーっと迂回して峠でまた一つの道につながって、自分の本来の夢にマージ(融合)するから」

――直感に従ってOKと。

「そしてそのエレベーターなり電車に飛び乗ると、その先に思いがけない出会いが待っています。人生は“誰と出会うか”の積み重ねで、ある意味、全部人の手に委ねられてますから。人の間を泳ぎながら、どの人にぶつかって“あ、ごめんなさい! コレ一緒に飲みます?”と言うか。そこから巻き起きる出来事によって自分が引き出されていくんです。だからまずは一歩を踏み出したら、自分ひとりで思いを叫ぶだけでなく、人に育ててもらっている意識を持つことも大切。人との調和という織り目が大きな模様になったとき、自分という個性の糸や色が合わせ鏡のように見えてくるんだと思います」

インタビュー:浜野 雪江

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