【テレビの開拓者たち / 松居大悟】「バイプレイヤーズ」若きメイン監督の今後の展望

2018/02/11 22:00 配信

芸能一般

“他の誰も作ったことのないもの”を目指したい


「ドラマかバラエティーか分からない、社会現象になるくらいのヒット作品を作りたい」。映画監督、劇作家、俳優とマルチに活躍する松居大悟


──では、演出する上で、映画にもドラマにも共通して心掛けていることは?

「狙うことはやめようと思っています。笑いを取りたいとか、グッと感動させたいというシーンでも、それを狙った映像にならないように気を付けています。僕自身、ドラマや映画を見ているときに、作り手の意図が透けて見えると冷めちゃうんですよね。その意味では、『バイプレイヤーズ』でも、俳優の皆さんが『狙っている感がある芝居はイヤだよね』という方ばかりだったので、すごく楽しかったです」

──また松居監督は俳優や、舞台演出家としても活動されていますが、その経験は映像の演出に生かされているのでしょうか。

「大いにあると思います。特に『バイプレイヤーズ』は、シェアハウスとか島ハウスとか屋内での芝居が多いので、空間の切り取り方だったり、その中での人物の配置だったり、役者の芝居の段取りや動きも含めて、その辺りの演出は、舞台での芝居をやっていなかったらできなかっただろうなと」

──そうした幅広いキャリアの中で、作り手としてターニングポイントになった作品は?

「大きく意識が変わったのは、僕の脚本家としてのデビュー作『ふたつのスピカ』(2009年NHK総合)ですね。ドラマの脚本を書くのが初めてということで、書き上げるまで缶詰め状態で、ドリマックスの橘(康仁)プロデューサーに、1行1行チェックしてもらったんです。例えば、『ト書きをこういう表現にしたら、撮影するときに演出部が大変な思いをするんだぞ』とか、要するに“軽い気持ちで書くな”ということを徹底的に叩き込まれて。橘プロデューサーも、僕をちゃんと脚本家デビューさせたくて、生半可なものを書いたらデビューできなくなるだろうということで厳しく指導してくださったんですよね。ドラマというのは一人で作るものじゃないんだ、一つの作品を作るのはこんなに大変なんだということは、あの作品で学んだ気がします」

──では最後に、今後の展望を。

「『バイプレイヤーズ』がまさしくそうなんですけど、ジャンル分けできない作品というか、ドラマかバラエティーか分からないようなものができたらいいなと。そう思う一方で、『半沢直樹』(2013年TBS系)とか『逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)』(2016年TBS系)みたいな、社会現象になるくらいのヒット作品にも憧れがあって。そのためには、自分の意識を変えなきゃいけないような気もするんですが、今のところは“他の誰も作ったことのないもの”を目指すべきなのかなと。それはもちろん、映画でも変わらないです。特に映画の世界は今、僕ぐらいの年代の監督が少ないので、時代の空気をしっかりと捉えた、同世代や下の世代の人たちが共感できるような作品を作っていきたいと思っています」