次世代俳優・吉村界人「『悪魔』は僕自身なのかも」

2018/02/21 08:00 配信

映画 インタビュー

TANIZAKI TRIBUTE「悪魔」で主演を務める吉村界人スタイリスト=安本侑史


――演じられた主人公・佐伯の危うさや、妖艶なセクシーさが吉村さん自身にすごくぴったりでした。あらためて、ご自身は演じてみていかがでしたか?

こういう人間を演じられたことはすごく幸せですね。これからの俳優人生、まだまだ続くと思いますけど、また来月も佐伯のような役をやるってことにはならないと思うんです。

やはりこういう人ってなかなかいないですから。僕の周りにもいませんし、この先死ぬまでに出会うかと言われたら、もしかしたら会わないかもしれないですもんね。作品の価値とは違う、人物としての価値がある人だったなと思いました。

――全くご自身の中にはない人物だったということですね!

でも、彼の追い詰められてしまう気持ちというのは、少し共感できます。

今回、実は監督から佐伯の部屋で寝泊まりしてくれと言われて、一人で布団を引いて寝泊まりしたりしていたんです。

撮影が終わると気づいたらみんな僕一人を置いて…。そのときに学生時代の自分を思い出していました。

俳優を始める前の僕はこんな感じだったかも。お酒を飲んで荒れるとかではなくて、暗い感じで大学ではこういうタイプでしたね。人生に迷っていたのかも。

佐伯ってずっと自分のこと考えているんですよ。自分の中でぐるぐる自分と会話しているというところは僕もありましたね。

――そういった困難はどうやって乗り越えてきましたか?

乗り越えられないですよね(笑)。時間も解決しないですし、寝たら忘れるタイプでもなく逆に眠れなくなる。

でも時間は経っていくものだし、僕はそれこそ芸術に助けられる部分もありました。

――照子のように余裕のある人物のことを吉村さんはどう感じますか?

うらやましいですよ。…いや、やっぱりうらやましくないのかも(笑)。僕は明らかに余裕がないタイプですし、余裕は欲しいんですけど、余裕のある人間ってそんなに好きじゃないんですよ。それよりは余裕がない人間の方が面白いなと思います。

――吉村さんの立ち居振る舞いからは一見、余裕という落ち着きを感じさせますが…。

全然そんなことないんです。何でも焦っています。例えばやりたかった作品ができなかった時、仕事がない時、休みが長い時、焦りますよね。芝居中も全部、緊張していますね。

――タイトルにちなんで、ご自身がこれは「悪魔」だなぁと思うことありますか?

なんですかね…僕自身なのかもしれないですね。

――ご自分ですか!?

そうですね、自分でいることがつらい、というのが悩みです(笑)。あと、表現欲求があり過ぎるのが“悪魔”ですね。

僕、表現以外のことで時間を割くっていうことができなくて。例えば、仕事とは別に歌詞を書いたり、絵を描いたり、よく分からない服を作ったり、創作への欲があり過ぎて。

本当はやめたいんですよ、もうしんどくて。楽しいんですけど、もうそう(しんどいと)思うことが面倒くさくて。

――それはお忙しいからですかね?

そういうことじゃないんですよ。僕、出不精なんですけど、何でそうなるかというとコンサートとか歌舞伎とか観に行くと、絶対に途中で出ちゃうんですよ。悔しくて。

「すげーな」って思わされちゃって。「うわぁ! 格好いい! 俺もあっち側にいきたい」ってなっちゃうんですよ。

それで「俺帰るわ」って家に帰って、自分で曲を書いたりして、「悔しい…あそこに立ちたかった!」って思うんです(笑)

それが止まらないので、僕にとってはこの欲求こそが悪魔ですね。

――じゃあ、そこで作った作品を世に出したいっていう思いも?

あ、それはないんです(笑)。誰かに見せたいっていう思いはあるんですけど、単なるストレス発散法になっているのかもしれません。

――やっぱり感受性がとても豊かですね! 最後に2018年に挑戦したいことを教えてください。

もうちょっと、自分の価値観を疑おうかなと思っています。こうやって長く話しちゃいましたけど、質問されることに対して、いつも言ってることが同じだなって思っているんです。

もうちょっと自分の言ってることが合っているのか、間違っているのか、自分を疑っていこうと思っています。

取材・文=中村リリー