今回のオファーについて、渡部は「カメラマンとして世界中を回れば回るほど、“ニッポン”のことを知りたいと思うようになったんです。故郷の静岡は温暖な気候で、ほとんど雪も降りません。だから、いつか雪国の女性たちの地に足がついた日々の暮らしや慣習に触れてみたいという気持ちは、ずっと抱いていました。
そうした中で今回、山形を取材する機会をいただき、そこで出会った人々の温かさや、他人のことを思い寄り添う愛情や、おもてなしや暮らしに向き合う厳しい姿勢、技の継承を目の当たりにして、もうとりこになりましたね。
カメラマンとして自分自身がこれからどう向き合っていくべきなのか、初心というものやカメラマンとしての姿勢を整えてもらえた気がします」と、当初から雪国の取材を望んでいたことを告白。
ビデオカメラを駆使しての映像撮影については、「スチールは瞬間的な切り口を一気に捉え上げていきますが、映像はカメラのレンズが自分の裸眼とリンクしているんだという感触を得ましたね。
見たものをそのまま捉えて、時間や空間が自分の感覚とつながっていく。そんな一体感がありました。両肩と首にかけた3台のカメラを、ワイド、ロング、ミドルで使い分ける戦場報道の現場では、基本的にレンズ交換はしません。
でも、今回はレンズ交換をすることで、瞬発的な時間に追われるのではなく、まるで職人さんたちの身内になったかのように、その人のリズムや気持ちをじっくりと見て、捉えて行くことができる。これが映像の醍醐味なんだと感じました」と、映像撮影の魅力を実感した様子。
撮影を通して感じた山形の印象を聞かれると、「オリエンタルカーペットの森谷さんのような百戦錬磨の年配の方から、若くして蔵元を切り盛りする長沼合名会社の真知子さん、生まれ育った東京を飛び出して剪定鋏職人の道を選んだ飛塚製鋏所の千鶴さん、そして、社内で2人しかいないマイスターとして各現場を統括し、若手の育成も担う山形カシオ株式会社の松枝さんと土井さん。
山形で出会ったこの5人をはじめとする『ものの婦』たちは、“気配り”というキーワードから、しっかりと自分の技をその地に根付かせて、技の継承をけん引していました。
今、日本各地で大切にしようとしている技の継承が、この山形には完全に根付いていますよね。自分が生まれ育ったニッポン、そして山形を見ることで、そうした『ものの婦』の思いや言葉、姿勢を、シンプルに伝えていきたいと思いました」と、実際に触れ合った「ものの婦」たちの姿に、大きな感銘を受けていた。
最後に、「食や観光、風光明媚な景色など、山形にはたくさん見どころがありますが、僕はやっぱりその土地の人と出会うことが、旅の最大の魅力だと思います。そして、山形を知ることが、たくさんの方の思いの大きな支えになると感じています。
今回僕が出会った『ものの婦』の映像から、山形の一番の魅力である、そこで暮らし、生活している方々の温かさに触れていただけたらうれしいですね」と、視聴者へのメッセージを語った。
なお、特設サイトでは、5人の「ものの婦」の動画だけでなく、県内で活躍するさまざまな職人たちの姿も公開中。この機会にぜひ、山形の県産品に触れてみよう。
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