現在、NHKの大河ドラマ「龍馬伝」に武市半平太役で出演し、落ち着いた雰囲気と独特の色気で注目を集めている実力派俳優・大森南朋。彼が主演したドラマ「ハゲタカ」の映画版が、CS放送の日本映画専門チャンネルで5月にTV初放送される。「ハゲタカ」は、企業買収をテーマにした社会派エンタテインメント作品で、主役のクールな天才ファンド・マネジャーの鷲津は彼の当たり役となった。改めて、彼に映画版とドラマ版の「ハゲタカ」ついて話を聞いた。
――今振り返ってみて、「ハゲタカ」というのは自分のキャリアの中でどのような作品だったと思いますか?
だいぶいろんな状況をよくしていただいたというか、ありがたい作品だったと思います。
――仕事のオファーの幅が広がったりとか?
それは自分ではよくわかっていない部分なんですが。でもドラマがあって映画があって、大河につながっているという(笑)。だから面白いなと思って。
――監督は大友啓史さん。「龍馬伝」でも演出を務めてます。
大友さんとは分かり合える瞬間が多い気がするから、また違うことをやってみたいなと思いますし。そういう人と会えたことは大きいです。
――最初に「ハゲタカ」の出演のお話が来たときはどう思いましたか?
“いいのかな?”と。僕が主役で数字が取れるわけがないと思っていましたし、鷲津のようなタイプのキャラクターイメージが自分の中でもまったくなかったもので。撮影中に、よく僕でOKされましたね、とプロデューサーに話したら、頭抱えていました。まだオンエア前だったので(笑)。グチってましたから、ロケ中に。「大変だったんだから、大森くん主演の話を上に通すの」。それを聞いて逆にこっちが慰めたりして(笑)。
――そのイメージになかった役をやって、逆に新しいイメージがつきました。
つきました。だいぶ。
――強すぎませんか?
いや、うれしいですよ。ぼんやりした青年だったりお父さん役が多かったのもあって、逆に鷲津ぐらいビシッとしてるのも面白いかなと。まさかこんなふうになるとは思ってなかったですけど。
――鷲津はずっと笑わず無表情ですが、奥には情熱を秘めてます。俳優としてはやりがいのある役では?
面白い役ですよね、鷲津って。なかなか出会えない役というか。
――見ている側も、救世主なのか、悪魔なのかわからない。
そうですね。だまし合いですから。こわいですよね。
――大森さんご自身は、鷲津のそういった部分を持ち合わせている?
いや、全然そんな。駆け引きは恋愛ぐらいで(笑)。
――鷲津という男に共感できた部分は?
きちんと自分の信念を持って生きてるということじゃないでしょうか。つらいことがあって、負けかけたけど自分を奮い立たせてニューヨークへ行って、何か確信を得て帰ってくるけど、やっぱり迷う。そのはかなさが魅力なのかなと思います。たまにやり方が少々強引なときがあって、それが面白くもあるんですけど。
――ドラマの段階では、映画化の話は全然出てなかったんですか?
はい。ドラマの「ハゲタカ」は全6話でやりきった感があって、「ハゲタカ」はいいから違うのやろうよと監督に言われてて。でも1年ぐらいしたら映画化の話が出て。で、「鷲津誰がやるんですか?」とか聞いて(笑)。
――「ハゲタカ」と監督が同じ「龍馬伝」ですが、大森さんが演じている「ハゲタカ」の鷲津と「龍馬伝」の武市は、激動の時代に生きて、信念を持って世の中を変革しようとする点で似ていると思います。
僕の中で半平太と鷲津の共通点は、苦悩の具合だと思うんですね。半平太は悲しくつらいことを経験して、龍馬と縁を切る決断をする。そのへんの心の中の迷っている感じが鷲津とも近いところがあるのかなって思います。
――出演者が男ばかりですね。全体的に男のドラマという気がします。
男のドラマをやりたかったんですよ。そういう映画が好きで、以前別のドラマをやったときのディレクターと話が盛り上がったんです。たまたま出た話かなと思ったら、「企画通したから」そんな風な電話を夜中の3時ぐらいにいただいて。こんな時間に…って、今でも覚えてます(笑)。そこから始まったんです、「ハゲタカ」は。そうやって話していてよかったなと。
――「ハゲタカ」の後で、俳優としてレベルが上がったと感じることはありますか?
僕の中ではあまり。周りの認知度が変わったので、ありがたいとは思うけど、自分の中身は急成長しないから、ゆっくりゆっくりやるしかないですね。
――では、この先一緒に仕事をしたい監督はいますか?
呼ばれたらどこにでも行きたいと思うんですけど。友人でもある山下敦弘くんとか。昔から知っている西川美和さんとか。ベテランの監督ともぜひご一緒してみたいです。
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