ゾンビと人間の女の子の恋を描いたディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービー「ゾンビーズ」が、5月19日(土)夜7:30よりディズニー・チャンネルで日本初放送される。
本作は、チアリーダーの少女・アディソン(メグ・ドネリー)と、ゾンビのアメフト部選手の少年・ゼッド(マイロ・マンハイム)の恋模様を描く青春ミュージカル。ゾンビと人間、それぞれの違いを受け入れることにより、自分らしくいることの大切さを伝える作品となっている。
そんな本作の日本初放送から一足先に、今回は作品レビューをお届けする。
高校を舞台に、お嬢様育ちのチアリーダー《アディソン》と、ストリート育ちの型破りな転校生《ゼッド》が出会い、恋に落ちる。これだけなら普通の青春学園ドラマだが、普通じゃないのは、ゼッドがゾンビだということ。そう、人間に容赦なく襲いかかる、あのゾンビ!
でもご心配なく。人間vs.ゾンビの戦いが繰り広げられたのは、50年前の話。その後ゾンビたちは、人間を襲わないよう開発されたリストバンド型の装置「Zバンド」を身につけ、隔離された町ゾンビタウンでそれなりに楽しく暮らしている。見た目は確かにゾンビ顔だけど、中身は私たちとさほど変わらない。ファッションやライフスタイルも、クールで独創的だ。ただし人間からは疎まれる存在で、人間たちのような権利や夢を持つことも、ゾンビには許されていない。
一方、人間が暮らすシーブルックは、一見なにもかもが完璧な町。人々のルックスも暮らしぶりも、気味が悪いほど完璧なのだ。ここでは“みんなと同じであること”が美徳とされ、個性的なスタイルは御法度。だからアディソンも、生まれながらの美しい白髪をウィッグで隠している。そんなシーブルックの高校に、ゾンビタウンの生徒たちが転入してくるのだが、両者は高いフェンスで隔てられ、ゾンビたちは不当な差別を受けることに。その扱いに違和感を抱いたアディソンは、心を通わせたゾンビのゼッドととともに、偏見に立ち向かっていく。
ディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービーの最近の大ヒット作といえば、日本でもブームを巻き起こした「ディセンダント」(2015年)だが、「ゾンビーズ」もその流れを汲んでいるといっていいだろう。ファンタジーの要素をふんだんに盛り込みながら、差別や偏見といったテーマにも切り込み、異なる価値観を受け入れることや、自分らしさを大切にすることを教えてくれる。ゼッドのキャラクターを通して描かれるのは、出身や育った環境で夢をあきらめる必要はない、というメッセージ。そして、アディソンのキャラクターを通して描かれるのは、人と違う部分があっても、それはすばらしい個性なのだというメッセージだ。
そんなメッセージ性のあるストーリーを軽妙なタッチで描きながら、歌とダンスで魅了するとびきり楽しいエンターテイメント作品に仕上げているのは、さすがディズニー。とくに今作は、音楽の使いかたに特徴が。まず、アディソンたち人間のグループを象徴する音楽は、王道の明るいティーンポップ。ダンスには、チアリーディングのルーティーンも取り入れられている。対するゾンビたちはクールなヒップホップと、2つのグループを異なるジャンルの音楽で表現しているのが面白い。
オープニングナンバーの「My Year」では、ポップとヒップホップが巧みに入れ替わるかたちで、アディソンとゼッドが属するそれぞれの世界を紹介。その後も、キレキレの迫力あるチアダンスを盛り上げる「Fired Up」、恋する2人のキュートなデュエット「Someday」など、耳に残るキャッチーな曲のオンパレード。なかでも圧巻は、ハイテンションなダンスナンバー「BAMM」にのせて繰り広げられる、ゾンビたちのパーティーシーン。このシーンの独創的な振り付け、とくに重力に逆らったようなゾンビダンスは、全米放送時に話題を呼んだ。昔ながらの青春学園ドラマでありながら、ストーリーも音楽もダンスもより進化したディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービー最新作を、お見逃しなく。
文・エンターテインメントライター 浮田久子
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