兵藤「役作りを行う際に、美術さんが用意した小道具や装飾からインスピレーションを受ける機会は多いんですか?」
吉田「結構多いですし、それがほとんどといっても過言ではないかもしれません。やっぱり台本のような文字情報から想像できるものと、実際に目にしたことで想像が膨らむものって、幅が全く異なるんです。私は役を作る時にその人の日常生活が見えることを大事にしているので、台本を読んだ段階で役をイメージして、そこから人物に対する想像を膨らますようにしています。でも、例えば髪を結ぶ、と言ってもいろんな人がいますよね。ゴムを手首に着けている人や、口にくわえて結ぶ人、ゴムを机に置いて結ぶ人。どれを選択するかで、その人の性格がなんとなく見えてくるんですよ。立ち姿もそうだし、座り方1つとってもそう。水の飲み方もそうですけど、そういう1つひとつをあらかじめ想像することは出来ても、現場に入ってみると、相手役のセリフの出方によってもまた反応が変わってくる。だから実際に目で見て耳で感じて、そうやって得た情報から役を膨らませていくことの方が多いかなと思います」
兵藤「今回吉田さんが演じた飛鳥は、どんなキャラクターだと捉えられましたか?」
吉田「飛鳥さんは、一見すると小狡い計算を重ねてセンスだけで器用に立ち回っているように見えますが、実は努力の人なんですよ。夢を実現させるための努力を重ねてきたという自負があるからこそ、仕事においてのプライドもあると思います。ただ恋愛においては確かに不器用で、学習しないところもある(笑)。でも恋愛って本来は本能的なものだと思いますし、飛鳥さんはそういう意味では他の人よりも本能に忠実に生きている人かなって。私は今回の映画については、シミュレーション映画だと位置付けていまして、観る方にとっての憧れる恋のシチュエーショントップ3が盛り込まれていると思っています。つまりやってみたいけどやらない、もしくは出来ないことを、飛鳥という人物=役を通してお客さんが疑似体験する。そんな映画だと思っているんです。先の展開を観た時に『言わんこっちゃない』と思う部分もありつつ、やっぱりどこかで自分を投影して観ているので、応援したい気持ちにもなれる。その過程があるからこそ、最後に飛鳥が選択すること、あのラストというのは清々しく感じていただけるのではないかなと思います。完璧に仕事をこなしている人にも弱い部分がある、綻びがある飛鳥さんはすごく人間らしくて私も大好き。愛おしみながら飛鳥という役を演じさせていただきました」
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