──伊與田さんは、数え切れないくらいたくさんのヒット作をプロデュースされているわけですが、ドラマのプロデューサーとして、常に心掛けていることや、大事にされていることは?
「原作のある・なしに関わらず、一番初めに企画を立ち上げるときに抱いた『このお話の面白さの肝は、ここなんだ』という思いを大切にしたい、というのはありますね。特にオリジナルのときは、制作していく過程で作品全体の方向を見失いそうになることがたまにあるんですけど、そういうときは必ずその“一番最初の思い”に立ち返るようにしています。そこはずっとブレてはいけないと思いますね」
──逆に、「一番最初の思い」とは違う作品が出来上がってしまうこともあるのでしょうか?
「もちろん、ありますよ。と言うより、やりながら少しずつ変わって成長していくという感じですかね。僕の場合、幸せなことに、スタッフもキャストも優秀な方々と組ませていただけているので、『この側面は思ったこととズレたけど、こっちの側面がとんでもなく優れている』というような美点があったりするんですよね。例えるなら、最初は150㎞/hのストレートを投げようと思ってたのが、球速は遅いけど切れ味のいいカーブで空振りが取れちゃった、みたいなことがあったりするんです(笑)。そういうときは、もう頭を切り替えて、カーブを極める方向にシフトチェンジする。結果、最初の思いとは方向が違っても、新しい発見が生まれて面白い作品ができたこともあります。そういう意味では、『うわぁ、やっちゃった』みたいな大失敗の経験は一度もないですね」
――伊與田さんのプロデュース作品は、いわゆる“社会派”ドラマとして評価されることが多いと思うのですが、そのあたりはご自身でも意識されているのでしょうか。
「“社会派”かどうかはよく分からないんですけど、僕としては、世の中で起きている現象とか、時代の空気みたいなものを、視聴者の方々にメッセージとして伝えられたらいいなと。僕は常々、テレビ番組というのは、時代を封じ込めた“缶詰”だと思っていて。今という瞬間をギュッと濃縮して作品に詰め込むことができれば、それは絶対に面白いものになると思うし、20年、30年経っても、決して古びることはないと思うんですよ。そういった、テレビドラマの普遍性みたいなものは、TBSに限らず、先人の方々が作られてきた作品を見ても感じますからね。さらに言えば、しっかりと今という時代を詰め込んだ面白い“ソフト”さえ作り続けていれば、地上波からネット配信などへ“ハード”が移り変わったとしても、きっと多くの方々の心に届くはずだと考えています」
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