――石橋さん自身も、エンターテイメントで救われた部分はあったのでしょうか?
それは大いにありました。ジョン・レノンやボブ・ディランの歌が好きで小学生の頃から聞いていて、彼らの歌詞を読むと、男女のラブソングもあるし、友達や仕事の歌もあるし、そして社会に起きていること、政治的なことまで1つのアルバムに収められています。
高校生の時には、自分が歌手になったらそうした政治的な曲を歌っていきたいと思っていたんです。
ところが、会社から「歌詞に一言も社会的、政治的なことを入れるな」と言われて、最初、耳を疑いました。それでも、そんな曲を歌ったら会社の逆鱗(げきりん)に触れてしまった過去があります。
当時、新聞とか雑誌で、社会派バンドとかメッセージバンドと書かれていたんですけど、僕らは、あえてそれを目指しているわけじゃないので、そのことはとても不本意でした。
また、映画も同様に小さな頃から好きで夢中で見ていました。中学の頃は友達と映画研究部を作って、友達と見た映画の感想を書いて渡し合ったりしていました。
でも、中学生の頃、先生が「将来の夢は?」って聞いたときに、他の人たちがプロ野球選手やパイロットと答えている中、僕は「映画評論家です」と答えたら、先生に「ふざけるな! そんな夢みたいなこと言ってるんじゃない!」と激怒されました。
――今まさに社会的に混沌としている中で、「スモーキング」に出合えていかがですか?
うれしいです。多くの人に共感していただける作品だと思います。また、最終回の展開は原作にはありませんが、「悪の元凶は何か」「佐辺が最後に倒したい相手は、大きな悪なのでは」との考えをプロデューサーの方々にお伝えしました。
現代は、世界的に見ても、それぞれの価値観や人の思いが多様化していて、一概に何が悪で、何が善かと言えない時代だと思います。
そんな社会だからこそ「本当の悪とは」というところを描いてほしいと相談させていただきました。
最後はスケールの大きな社会というものにも立ち向かっていきますので、ぜひご期待ください。
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