「視聴率競争という古い価値観にこだわるのは本当に意味がないこと」【テレビの開拓者 / 角田陽一郎】

2018/05/14 06:00 配信

芸能一般

今はテレビにとって第2の開拓期。フロンティアはどこかにいるはずです


「テレビ界は今、第2の開拓期に入っています」という角田陽一郎氏


――「オトナに!」は、ユニコーン、フジファブリックといったミュージシャンをはじめ、俳優、映画監督、劇作家など、ゲストの顔触れも新鮮ですね。

「ゲストのキャスティングに関して言うと、『オトナに!』は、“面白いことを考えている人”に出ていただく、というのがコンセプトなんです。僕は、世の中には“面白いことが言える人”と“面白いことを考えている人”がいると思っていて。テレビの世界は、芸人さんに代表されるような“面白いことを言える人”が重宝されるものなんですが、この番組では、“面白いことを考えている人”をお呼びして、放送を何週に分けてでも、好きなだけしゃべっていただく。その分、尺を食うんですけどね(笑)。そしてトークの内容も、その人が話したいことだけを徹底的に話してもらう。テレビを作ってる人間って、えてして、スキャンダルとかゴシップとか、本人が話したくないことを言わせたがるじゃないですか(笑)。でも、この番組ではその逆を行こうと。でも面白いのは、本人が話したいことだけを話しているうちに、だんだん本音が顔を覗かせて、われわれが聞きたかったスキャンダル的なところに話が及ぶことが往々にしてあるんですよ。それはちょっとした発見でしたね。男女の駆け引きと一緒で、『脱げ、脱げ!』って言っててもダメってことですよね(笑)」

──MCにいとうせいこうさんとユースケさんを起用された理由は?

「ユースケさんは、仕事をご一緒したこともあるし、僕自身、昔から大好きだったので、声を掛けさせていただいたんですが、ユースケさんご本人から、この番組を引き受ける条件として、いとうせいこうさんと一緒にやりたいというリクエストがあったんです。実は僕、それまでは、小説もラップもテレビの司会もハイレベルにこなしてしまうせいこうさんに、あんまり良い印象を持ってなくて(笑)。要は、ジェラシーを感じてたんですよ。近親憎悪というか。でも、お会いした途端、一瞬で惚れちゃいました。そのとき、せいこうさんがおっしゃってたのは、『自分は世の中を理想の国に近付けるために活動しているスパイなんだ』と。あからさまに活動すると捕まってしまうから、こっそりやってるんだって。それを聞いて、20代、30代のころの僕は、局の編成部や先輩のディレクターと、あからさまに戦っちゃってたんだなと気付かされましたね(笑)」

──テレビにとどまらず、さまざまなフィールドで創作活動を展開している角田さんから見て、昨今のテレビ界は、どんな風に映っているのでしょうか。

「エンタテインメントが見たいという人は、いつの時代にもいますし、テレビは免許事業ですから、滅ぶことはないでしょうね。でも、ネット配信という形がこれだけ一般的になってきている中で、視聴率競争みたいな古い価値観にこだわるのは、本当に意味がないことだと思います。例えるなら、黒船がやってきた時代に、いまだに参勤交代を続けてるみたいなもので(笑)。そんな旧態依然とした業界に、新しいスポンサーがつくわけもない。いわば、今はテレビにとって、第2の開拓期。そもそも、テレビのビジネススタイルが70年近く続いたことが奇跡なんですから。フロンティアはまだどこかにいるはずですよ」