さて、和田竜の同名ベストセラー小説を、中村義洋監督が映画化した『忍びの国』(2017年)での彼女は同じ“勝ち気”キャラであっても、違うアプローチでまたすごかった。大野智演じる主人公の伊賀一の忍び・無門にさらわれた武将の娘・お国を演じているのだが、ここでの石原さとみは基本、つつましい。口調も優しく、おっとりしている。しかし、芯の強さはカヨコ・アン・パタースンとも双璧を成し、“叱られ好き男子”をまたも激しく刺激する。例えば無門が“はした金”を持って帰宅しようとした時、家の中には入れず、「無門殿はわたくしを、安芸の国よりさらってきた折、何とおっしゃいましたか?」と問う。無門はぜいたくな暮らしを彼女に約束したのだ。それなのに、家といっても掘っ建て小屋の極貧生活。「本当にわたくしと夫婦になるおつもりがあるのですか?」とダメ出しの連発を食らわす。無表情で、ちょっと目線を外して接するところにゾクゾク。さらに別のシーンでは、足軽から一国一城の主(あるじ)にまでなった秀吉の話をして「侍におなりなさい」と無門に勧める。その言葉がちっとも響かないと分かって、ギロリとにらむ! 目つきの鋭さ、無言の圧のすさまじさに“瞬殺”されること間違いなし。
文=轟夕起夫
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