――では、テレビマンとして転機となった番組は?
「初めて自分が企画した『余命コミュニティ ~あなたは死を前にして何を想う~』(2012年テレビ東京)という番組です。テレビ東京には、『ザ・ドキュメンタリー』という、若手のスタッフが挑戦できるドキュメンタリー番組の枠があって、その一環として放送されました。入社3年目でしたけど、すごくうれしかったですね」
――どのような内容のドキュメンタリーだったんでしょうか。
「個人的な話なんですが、かつてのバイト先の先輩だった方が、『今度結婚する』と連絡してきてくれた、わずか数カ月後に、がんで亡くなってしまった…という出来事があって。それを機に、『人が死ぬってどういうことなんだろう?』と考えていた時期があったんですね。そんなとき、当時流行っていたSNSの『mixi(ミクシィ)』の中に、病気を患って余命を告げられた人たちが集う『余命宣告』というコミュニティを見つけたんですよ。そこで、『余命宣告を受けている人にお話をお聞きしたいので、取材をさせていただけませんか』と、そのコミュニティのメンバー全員にメッセージを送ったところ、数人に快諾をいただいて、番組を作ることができたんです。この『余命コミュニティ』はその年の、テレビ東京系列のドキュメンタリー大賞をいただいて。一つの自信につながった番組です。カメラワークとか編集とか、技術的には拙いところも多々あるんですが、今でも落ち込んだときなんかに見返しています(笑)」
――また、最近のお仕事で言えば、「液体グルメバラエティー たれ」(2017年テレビ東京系)も衝撃でした。
「『たれ』は、深夜でグルメ番組をやりたい、というのがまずあって、(放送)作家さんと話していく中で、“テレ東らしいグルメ番組”って何だろう、というところを突き詰めていった結果、ああいう変な番組になりました(笑)。でも実際、“たれ”に特化した番組を作るっていうのは、ものすごく大変で。1クール(3カ月間)の放送だったんですけど、終盤はネタが尽きて迷走を始めました。いろんなたれを将棋の駒に見立てた『たれ将棋』っていう企画をやったときは、正直『これはもう末期だな』って…(笑)」
――「池の水ぜんぶ抜く」ならぬ「壺のタレ全部抜く」という企画にも大笑いしました(笑)。
「ありがとうございます(笑)。ともあれ、『たれ』という番組は、僕らスタッフが心から楽しんで作ることができたという意味で、非常に思い入れの深い番組であることは間違いないですね」
――先ほど“テレ東らしいグルメ番組”というお話がありましたが、三宅さんの考える“テレビ東京らしさ”とは何でしょうか?
「う~ん、難しいなぁ…(笑)。いわゆる、昔ながらの“テレビの王道”みたいな番組ってあるじゃないですか。その点、テレビ東京は、予算的にも人員的にも、その王道を行くことはなかなか難しいんですよね(笑)。でもその分、他局ではできない、趣向を凝らした新しい企画が次々と生まれているのも事実なわけで。そんな、王道からズレた“違和感”が、テレ東らしさなのかなと。視聴者が『何これ?』って思うような(笑)、違和感のある企画がテレビ東京ならではの武器なんじゃないかと思います」
――その“違和感”は、三宅さんが新番組の企画を考えるときも意識している部分ですか?
「すごく意識しますよ。他の局で見たことがあるような企画は、若手の…まだ自分では若手だと思ってるんですけど(笑)、若手の僕が書いたらダメだと思うので、他のどの番組とも似ていない、しかも、テレビ東京の中でも誰もやっていない、新しい番組を企画したい、というのは常に考えています。ただ一方で、温故知新じゃないですけど、新しさの中にも、『TVチャンピオン』(1992~2006年テレビ東京系)だったり、『田舎に泊まろう!』(2003~2010年テレビ東京系)だったり、先輩方が作ってきた番組のテイストというか、“テレ東イズム”みたいなものも受け継いでいけたら、という思いもあります」
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