2018/06/02 14:00 配信
かつて、女の“性欲”はないものとされていた。セックスは男性から誘われて、受け入れるものであり、ゆえに自ら誘う女は、時に痴女呼ばわりされたし、自慰は淫乱な女だけがする行為だとされていた。そして、そういう“性欲の強い女”は、“普通の女”よりも一段低い女とみられていた。
なぜ、人間であれば持っていても当然の性欲の存在が無視されていたか。もしくは侮蔑されるものだったのか。それは多くの男たちにとって、女が性欲を持つことは都合悪くあったからだ。
受け身であるはずの女性が、自らの欲望の存在を肯定し、それを満たそうとし始めると、その女を所有しているつもりであった男たちは、これまでのように、安堵していられなくなる。現に、セックスレスやトキメキの欠如から、セックスのアウトソーシングを決意して、配偶者以外の男性とセックスをした妻が、その後、夫に離婚を切り出すという話は、今は決して珍しい話ではない。わたしの周りでも、昨年だけで2人の女友達が、浮気をきっかけに夫との別離を決めている。別の男性とセックスをした瞬間に解放され、不自由で不満だらけの生活を、この先も送るのが嫌になってしまったというのが、その理由らしい。
「自分の女」としていつまでも支配しておくために、かつての男性たちは、女の性欲をないものとする手段を使っていた。しかしもともとあるものを、いつまでも封じ込めておくことは出来ない――あるひとりの女の性欲の目覚めと、それによる解放を赤裸々に描いているのが、直木賞受賞作家・村上由佳による同名小説を原作とし、6月16日(土)夜10時からWOWOWにて放送される「連続ドラマW ダブル・ファンタジー」だ。
水川あさみ演じる本作のヒロイン、高遠奈津は35歳の人気脚本家だ。奈津を見出した元テレビ局のディレクターであり、今は主夫の省吾(眞島秀和)とともに、郊外の一軒家で暮らしている。一見平穏な結婚生活を送っているように見える奈津だが、巧妙に支配しようとする夫と、勝手な“妻たるもの”の価値観を押し付ける実母(多岐川裕美)に、不満を抱えていた。
そんな奈津はある日、敬愛する舞台演出家の志澤(村上弘明)に新作公演へ招待され、それを機に一夜をともにすることになる。
志澤は、省吾よりもさらに支配的な男だ。ホテルの一室。初めての浮気に戸惑う奈津をいたぶるように、「なぁ、俺としたいか。言えよ、ちゃんと言え」と問いかけ、最後の決断を、奈津に委ねる。自らの持つあさましい欲望を、志澤によって直視せざるを得ない状況に追い込まれた奈津は、モラルを捨て、堕落を決意する。志澤のベッドシーンは、いかにも年上の男らしく熟練されており、ねっとりと濃厚。玉のような汗の浮かんだ肌から、息苦しいほどの熱気が伝わってくるようだ。
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