5月15、16日の2日間、静岡県の富士スピードウェイにて、ことしが初の開催となる野外フェスティバル「JAPAN JAM 2010」が行われた。15日はCocco、BEAT CRUSADERS、ストレイテナーら9組が、16日は奥田民生、吉井和哉、エレファントカシマシ、サンボマスターら8組が出演。2つ設けられた会場で、奥田×東京スカパラダイスオーケストラ、サンボマスター×ゴダイゴなど、出演アーティストらがそれぞれ自由なスタイルでのセッションを実現。豪華共演が目白押しの2日間となった。
2日目のトップ・バッターを務めたサンボマスター×ゴダイゴは、「Monkey Magic」や「ビューティフル・ネーム」など、ゴダイゴのヒット曲のほか、サンボマスターの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」も熱唱し、元気に会場を盛り上げた。GRAPEVINEは彼らのプロデュースも手掛けるギタリスト・長田進と、トリプルギター編成による迫力のステージを見せた。曽我部恵一BANDは、曽我部が「友達であり大好きなボーカリスト」と紹介したGOOING UNDER GROUND・松本素生とおとぎ話・有馬和樹を迎えてハッピーな空間を作り出していた。また、YO-KINGは新バンド“Yo-king Master Cabin Attendant”をお披露目。そのメンバーとして登場したサンボマスターと歌った、西城秀樹のカバー曲「YOUNG MAN」では、最も後方の“イスゾーン”の観客までもが立ち上がり「Y!M!C!A!」の振り付けで会場は一体に。ピアニスト・山下洋輔とサックスプレーヤー・坂田明という日本を代表するジャズプレーヤーを迎えてセッションしたZAZEN BOYSは、ジャズとロックの融合で観客を酔わせた。
エレファントカシマシは「悲しみの果て」などをバンド編成で演奏した後、バイオリン奏者の金原千恵子とチェロ奏者の笠原あやのと「リッスントゥザミュージック」などをセッション。その後ボーカル・宮本浩次が緊張した面持ちでCharaを呼び込むと会場は大興奮。Charaの振り絞るような切ない声と宮本の高音が合わさり、オリジナルとは違う魅力を醸し出した「Swallowtail Butterfly〜あいのうた」(YEN TOWN BAND)のほか、エレカシの「それを愛と呼ぶとしよう」とCharaの「エレガンス」をミックスして1曲にするという実験的な1曲も誕生。しゃがんだり踊ったり、自由に振る舞うCharaの姿が印象的だった。さらにラストの「待つ男」では、ボルテージの上がった宮本が自身のシャツをかきむしり、ボタンが飛んで生地も破れてボロボロに。“完全燃焼”というべき熱いステージを展開した。
奥田民生は東京スカパラダイスオーケストラとセッション。冒頭では奥田が「前座的なものをやります(笑)」と、アコースティックギター1本の“ひとり股旅”スタイルで「荒野を行く」や「野ばら」を披露。いったん奥田が去ったステージには東京スカパラダイスオーケストラが現れ、谷中敦が「あったかくなってくれ!」と客席をあおり「CALL FROM RIO」や「Just say yeah!」などを演奏し、会場は“スカ一色”に。観客が“あったかく”なったところで、スーツ姿の奥田が再登場し「美しく燃える森」や「流星とバラード」などをコラボした。ラストはエディット・ピアフの「愛の讃歌」を熱唱。奥田の歌声が富士のふもとに響き渡った。
大トリを務めたのは、意外にも今回が「フェスで初のトリ」だという吉井和哉。ドラムにTRICERATOPSの吉田佳史や、ギターの菊地英昭(brainchild's/元THE YELLOW MONKEY)ら強力なメンバーと「ビルマニア」や「シュレッダー」など、本人いわく「暗さの中に明るさ」がある独特の世界観で観客を引き込んでいった。セッションでは、昨年12月に発売されたTHE YELLOW MONKEY結成20周年を記念したトリビュート盤に参加したアーティストらが参加。9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎がボーカル、吉井がギターを務めた「TVのシンガー」や、黒猫チェルシーのボーカル・渡辺大知、ギター・澤竜次が参加した「パール」のほか、奥田民生の予期せぬ登場に沸いた「LOVE LOVE SHOW」など、二度と見られないような貴重な組み合わせが続々。そして、昨年12月24日にボーカル・志村正彦が急逝したフジファブリックとのステージでは、吉井は静岡県育ちの自身と山梨県出身のフジファブリックが共に富士山を見て育ったことに触れ、「Four Seasons」でセッションを。アンコールで披露された「JAM」を含め、歌声、演奏、会場の思いが空まで運ばれていくような幻想的なライブとなった。