ネットで火が付いた!「テラスハウス」のサクセスストーリー【フジテレビプロデューサー・太田大】

2018/07/18 00:00 配信

芸能一般

テレビに先入観を持っていない若い視聴者が、「テラスハウス」に興味を示してくれるようになった


現在「軽井沢編」が展開中の「TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS」。第22話(地上波は7月30日(月)放送)からは新メンバーが登場する(c)フジテレビ / イースト・エンタテインメント


──そして「テラスハウス」は、現在も新シリーズが作られるほどの大ヒット番組となりました。

「今でもよく覚えているんですが、ほぼ完成に近い第1話のVTRを局内でプレビューしたときに、周りから『これって、まだ編集前だよね?』みたいなことを言われて(笑)。当時のバラエティー番組は、画面をたくさんのテロップが埋め尽くしていて、しかもそのテロップは統一されていないさまざまなフォントと、あらゆる色で構成されていて。そして、CM前には煽りがあって、CMが空けたらもう一回そこをなぞってから始まる…といったスタイルが、いわゆる“常識”的なものでした。でも僕たちは、それとは真逆のことをやろうと。そのためにまずこだわったのが、“デザイン性の高さ”でした。ただ、意識的にデザイン性を高くするにはどうしたらいいかという目線よりは、松本さんと僕がやりたかったことを形にしたら、デザイン性は譲れなかった…という結果なので、もちろん既存の番組を否定しているわけではなくて。僕も松本さんも、テロップもない、CM前の煽りもない、ひたすらデザインに趣向を凝らした映像が一番見やすいはずだと信じていたんです。

でも、開始当初は数字(視聴率)も芳しくなくて。編成部の上司たちから『もっと分かりやすく』と注意されながらも、スタイルを変えずに放送していました。すると、テレビというものに先入観を持っていない、若い世代の視聴者がだんだん興味を示してくれるようになったんです。『何かしゃれたものやってるよね』と、ルックに興味を持ってくださる人と、個性豊かな住人たちの行動にリアルタイムでツッコミを入れてくださるSNSユーザーが増えてきた。はっきり手応えを感じたのは、2013年の中ごろですね」

――その後、2014年に一度、地上波での放送が終了しますが、翌年には映画「テラスハウス クロージング・ドア」(2015年)が公開され、再び注目を集めました。

「さらにその後、2015年からNetflixでの配信が始まって。結果論ではありますが、形を変えていくルートを辿ったことは、いい経験になりましたね。『テラスハウス』というのは、ネット配信には最適なコンテンツだったんだという発見もありましたし」

──ネット配信といえば、今や海外で制作されたリアリティーショー番組も数多くありますが、そことの差別化は考えていますか?

「配信の世界では、海外勢はもちろん国内の番組も、リアリティーショーは驚くほど増えています。ただ、それらの番組を見ていると、厳然たるルールとゴールがあって、内容も過激になってきている気がします。もしかしたら、また潮流がかつての恋愛バラエティー寄りになってきているのかもしれません。そんな中、『テラスハウス』は、“みんなで同じ家に住む”という大枠のルールがあるだけ。例えば、ヒール的なキャラクターがいかにもヒール然と描かれるのが通常のリアリティーショーだとすれば、『テラスハウス』はもっとリアルな、ドキュメンタリー性を重視している。人間には色々な面がありますから、『この人がヒールです』というような描き方はしたくないんですよ。それよりも、一人一人のキャラクターを多面的に描くことで、そこから生まれるドラマを楽しんでいただきたいなと。そんな人間ドラマの部分を『テラスハウス』の特長として押し出していきたいと思っています。潮流がもし、かつての恋愛バラエティーに戻ったとしても、おそらく『テラスハウス』は引き続き、ただただ若者たちの生態を切り取っていくだけで、何も変わらないと思います」

──では、現在放送中の「軽井沢編」の見どころは?

「今シーズンは初めて都会ではなく、春夏秋冬がはっきり現れる山間を舞台にしているので、まずはその風景の美しさに注目していただけたら。あと、山間の空気がそうさせるのか、前シーズンのハワイ編と比べると、すごく平和な雰囲気ですよね(笑)。ハワイ編のドロドロ具合というか、自己主張のぶつかり合いみたいな感じも、僕は好きなんですが(笑)、軽井沢編では、そんな穏やかな空気の中で展開するドラマを楽しんでいただきたいと思っています」