第3話のクライマックス、飯島との対決はまさに“情念の対決”でした。今回僕は『ハゲタカ』で鷲津として1997年から2018年の21年間、つまりほぼ四半世紀を生きるのですが、その中で第1部の鷲津というのは、ある種の情念や怒りを持って、飯島との因縁に向き合っています。飯島亮介という男に対しては“情念”を、そして腐りきってしまった日本の企業に対しては“怒り”を――そのふたつの感情をテーマに第1部は鷲津を形成しました。
そういった意味で、このシーンはその感情の集大成であったように思います。父の死から10年。ようやく飯島の前にまでたどり着いた。その達成感と、この先自分自身は何を目的に生きるべきなのかという喪失感。そのふたつの感情を同時に抱いている、とても“情念”の強いシーンでした。結果、どちらでもない虚無感が支配していたように思います。
このシーンの撮影は8分間の長回し。一度もカメラを止めずに撮影をしました。鷲津を生きている時は長く感じなかったのですが、撮影後8分あったと聞いて驚きました。
これも第3話ですが、最後の芝野とのやり取りも非常に印象に残っています。鷲津が芝野に「この国を守るために一緒に戦いませんか?」と声をかけるのですが、芝野に断られる。そのときの芝野の顔が忘れられません。芝野には“家族”があり、その家族を守らなくてはならない。それは、鷲津にはない感情でしたが、ふとそのことに納得がいったので、断られても「そうですか」とすんなり受け入れ、別れられたのだと思います。
あのときの芝野の表情は、何かを懐かしむような、終幕を迎えたような揺るぎない顔で、鷲津にはとてもできない表情。鷲津と芝野の生き方の違いをまざまざと見せつけられた瞬間でもあり、ある種鷲津の孤独が完成せざるを得ないシーンでもありました。
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