鈴愛と律にとって“風”は故郷・梟町の象徴だ。
鈴愛と律が悩みや本心を打ち明ける河原でも、鈴愛が家族で墓参りをする丘でも、いつも気持ちのよい風が吹いていた。
そして、“風”のことを言い出すのは晴だ。鈴愛が幼い頃の墓参りでも「いい風が吹いたね」と口にしていたし、鈴愛が再び上京する直前、最後に家族全員で丘を訪れたときも「あ、いい風が吹いたねえ。捕まえたなるような風やった」と気持ちよさそうにつぶやいた。名古屋の病院に入院するにあたっては、「周りビルばっかや。何も見えん。風も入らん」と寂しそうだ。
そして、東京も“風のない場所”として描かれている。こちらを語るのは、もっぱら律のほうだった。
現場を離れ、菱松電機の社屋で予算管理に明け暮れる律は、はめ殺しの窓に向かい「風の音が聞こえん…」と嘆く。律にとって、はめ殺しの窓は不自由の象徴だ。友人・正人(中村倫也)も、タワービルの商社から老舗出版社に転職し「窓が開く」ことで「なんかホッとした」といい、律と頷きあう。そんな正人が気に入って律に紹介したアパートの住所が“杉並区風の谷”というのも面白い。
そんな東京でも、風が吹く場所がある。廃校になった校舎を利用したシェアオフィスだ。
第136回(9月7日放送)で正人に連れられ初めてオフィスを訪れた律は、「たしかに居心地よさそうですね。窓から風が入る」と頷き、帰宅後も正人に「あそこの学校オフィスはいいな。学校だけあって、窓が大きい」と語っている。“風があるかどうか”は律にとって、とても重要なことなのだ。
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