舞台歌唱指導・新良エツ子、モーニング娘。との出会いで知った“歌・ダンス+ルックス”を持つアイドルのポテンシャル

2018/09/14 06:00 配信

アイドル インタビュー

歌唱指導でハロー!プロジェクトの舞台に携わる新良エツ子。元乃木坂46・生駒里奈主演舞台「魔法先生ネギま!~おこちゃま先生は修行中~」など多くの作品に携わる


近年、アイドルグループによる演劇・ミュージカルが活気づいているが、その土壌を築いたのはハロー!プロジェクト(ハロプロ)で間違いない。2001年、モーニング娘。初のミュージカル「LOVEセンチュリー~夢はみなけりゃ始まらない~」を皮切りに、数々の舞台演劇、ミュージカルを上演し、早くから映像以外の芝居のジャンルにも活動の場を広げていった。

その後2006年にハロプロメンバーによる演劇プロジェクト「劇団ゲキハロ」を立ち上げ、2014年にそれを引き継ぐ「演劇女子部」のプロジェクトを開始。今年6月に成功を収めたモーニング娘。主演舞台「ファラオの墓~蛇王・スネフェル~」を始め、彼女たちを目的に足を運び、劇の楽しさを知った方も多くいるだろう。

「ファラオの墓」を始め、近年のハロプロ舞台の多くで歌唱指導に就くのが、自身もボーカリストであり役者でもある新良エツ子だ。初めての携わりはモーニング娘。主演舞台「ステーシーズ 少女再殺歌劇」(2012年)であり、この作品が新良の歌唱指導者としての本格的なキャリアスタートにもなった。

アイドルに興味がなく、ハロプロを知らなかった新良にとって、「ステーシーズ」でのモーニング娘。への歌唱指導は楽しさも混じる驚きの連続だったという。アイドルへの向き合いとなった当時のことを振り返りつつ、彼女たちアイドルグループによるミュージカルの魅力などを聞いた。

キラキラしているアイドルを見に行く気持ちが分かったモーニング娘。との出会い


――「ステーシーズ」当時のこと、覚えていますか?

もちろん、よく覚えてますよ。変わったまとまりの子たちだと思いました。モーニング娘。という1つのグループですけど、できることが1人1人全く違っていて、こんなにもバラバラな子たちと作品を作っていくというのは初めてのことでした。私がそれまでに指導、出演してきた舞台でこうもバラバラな座組はなかったので、ちょっと不思議な感覚でした。

――「どうしたものか」という感じですか?

それよりも、単純に面白いなという印象です。だって、最初からたくさんの色があるわけじゃないですか。それは強みだし、しかもみんな可愛いんですよ。歌唱力も演技力もまばらで、ポテンシャルはそれぞれ全く違うんですけど、可愛いというのは全員共通。やっぱりルックスが良いというのは役者にとって大事なことで、キラキラしてる彼女たちを見にいくお客さんの気持ちはこの時の稽古期間でものすごく分かりました。

1人、ヤンキーみたいな子(田中れいな)もいて、それもびっくりでしたね。見た目ヤンキーなんだけど、でもすごく可愛いくて、とても努力家で。私はそういう子が大好きです。れいなちゃんは歌もダンスもできて、芝居にも華がある。アイドルにもこんな子がいるんだって、それは意外な感じでした。

――歌唱スキルに定評のあるモーニング娘。ですが、「ステーシーズ」当時は田中さん以外はミュージカル経験は少なく、歌唱力もまだ不安定な時期だったと思います。

いえ。そんなことはなく、みんな歌えていましたよ。もちろん個人差はありましたけど、総じて歌えるレベルにありました。それがハロプロだからなのか、その時は分かりませんでしたが、色んなアイドルの歌唱指導を経験してきた今は、ハロプロは特別なんだなというのを実感します。

――接してみて、アイドルグループならではと思ったことはありましたか?

リーダーがいるということですね。一番上のれいなちゃん(6期メンバーの田中以外は9期、10期メンバーだった)がみんなを引き締めていたんですが、演者の中に統率者がいるというのは他の舞台ではありえないことなんです。それは普通、演出家の役目ですから。そういうのもアイドルグループであることの強みであって、あの時のれいなちゃんはリーダーとして相当プレッシャーだったと思います。仮歌をしっかり覚えてきていない子には厳しく注意してましたね。劇の歌唱指導は歌のレッスンではないので、入れてこなければ始まらないんですよ。

――そういう時、新良さんは怒らないんですか?

私はあまり怒らないです。だから厳しくはないですが、覚えてきていなければ「今日はやる意味がないからまた今度ね」という感じで流してしまいます。怒らないけど、じゃあ見ませんって。

――その方が堪えると思います。

だからです。人って、怒られるよりも呆れられるほうが嫌ですよね。代わりに怒るのがれいなちゃんで、体育会系かもですけど、これはすごく大事なことなんです。フワフワしている気持ちが先輩のひと言でピリッとするので、良いグループだなと思いました。