――新良さんは田中れいなさん主演のミュージカル「悪ノ娘」(2017年)も歌唱指導されています。「ステーシーズ」から5年ぶりでしたが、歌の印象に変化はありましたか?
れいなちゃんは「ステーシーズ」の時にもう出来上がっていたので、良い意味で変わらないですね。私はLoVendoЯになってからもずっと見てきているので、その印象で言うなら声がとても強くなったのは間違いないです。オケの良い環境で歌ってきたモーニング娘。の時と違って、バンドは自分の声を楽器に負けないように張らないといけないですから。そこはミュージカルにプラスになっている部分だと思います。
あと、れいなちゃんと言ったら仮歌ですね。彼女はまず、私の仮歌を完コピしてから稽古に来るんですよ。なかなかいないくらい、すごく良い耳をしてます。音を捉えて、歌いこなす技術も高いです。
――教えることがない感じですか?
ポップスだったら後は自分で自分の色を付けていけばいいんですが、ミュージカルだとそこから調整はしていきます。私とれいなちゃんでは声質が違うし、芝居を付けて通した時、そこで綺麗に歌われても…というシーンもありますから。「1つブレスを入れようか」「そこは音を変えようか」とか。その場の調整にもすぐに対応できる能力があって、そういうところはれいなちゃんとまーちゃん(佐藤優樹)はそっくりだなと思います。音感に対するセンスですよね。れいなちゃんと同じで、まーちゃんも絶対にリズムと音程は狂わないし、小田(さくら)とはまた別の歌の上手さですね。
――田中さんは技術も含めてですが、佐藤さんは音への感覚が歌唱の高さに繋がっていると感じます。
まーちゃんは音楽に対する感性がとても高いんですよ。面白いのが、曲ができると絶対、曲への感想を言いにくることで。「まーはどういう声で歌ったら一番この曲に合うんですか?」とかも聞いてきます。芝居よりも音のことを考えているのが独特ですね。小田はどちらかというと役を考えて歌っていると思うし、石田(亜佑美)は絶対に芝居のことだけを考えていると思います。バラバラすぎて面白いですね、モーニング娘。は。
――田村芽実さんのように、今後、本格的にミュージカルを目指す子も出てくるかもしれません。今まで指導してきた中で、ミュージカルに進んでも遜色ないと思うアイドルはいますか?
ここもモーニング娘。になってしまいますが、小田ですね。小田は絶対に大丈夫だと思います。でも、期待値で言ったら石田になるんですよね。芝居も入れての総合力がとても高いので、もし石田がミュージカルに進んだら革命が起こりそうな気がします。「あの子、歌がものすごく上手いわけじゃないのに、何!?」って。スネフェルはハマり役だったというのもありますけど、それ以上に私は驚きましたからね。
これから伸びる子もいると思いますが、今、ミュージカルに進んで見劣りしないのはその2人ですね。
9月28日(金)からは東京・全労済ホール/スペース・ゼロにてJuice=Juice主演舞台、演劇女子部「タイムリピート〜永遠に君を想う〜」の上演が開始する。新良はこちらの歌唱指導にも就いている。Juice=Juiceはハロプロの中でも屈指の歌唱力を持つグループだけに、どのような舞台になるのか楽しみなところだ。
新良エツ子……歌手・作詞家・歌唱指導。多くの歌声の使い分けを得意とし、舞台、ミュージカル、映像、様々なジャンルで活躍。幼少期よりクラシックバレエ・ピアノ・声楽なども学び、芸術への造詣が深く、ミュージカルやアイドルへの指導に定評がある。ハロー!プロジェクトの他、乃木坂46版ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」(作詞)、生駒里奈主演舞台「魔法先生ネギま!~おこちゃま先生は修行中~」(歌唱指導)など多くの作品に携わる。
取材・文:鈴木康道
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