演技+ドキュメントの映画で作る新しい形の「地方創生」

2018/09/15 09:00 配信

映画

大東駿介は俳優ではなく大学生・大海夏生として、佐藤佑香さんら地元の人たちと接した(C)2017『YOU達HAPPY 映画版 ひまわり』製作委員会


「地方創生」「町おこし」を掲げて公開される映画は数多いが、その中でも“セミフィクション”という新しい手法で作られた映画が現在公開中だ。

その作品が、TUBE前田亘輝が企画した映画「YOU達HAPPY 映画版 ひまわり」。コンサートで全国を回る前田が、地方の過疎化問題から必要性を実感したという「地方創生」を形にした作品で、2014年に日本創成会議が発表した「消滅可能性都市」に入った栃木・那須烏山が舞台に選ばれた。

メガホンを取ったのは、バラエティー番組「ウンナンのホントコ!」(1998年~2002年、TBS系)で話題となった恋愛企画を劇場版にした「映画版 未来日記」(2000年)の杉本達監督。今回も「未来日記」と同様、出演者によってストーリーが変わる作品となっている。

主役は地元の女子高校生


主演には大東駿介の名前が記されているが、大東が「主役は彼女たち」と言う通り、物語はオーディションで選ばれた地元の高校生である佐藤佑香さん、青木由比さんを中心に展開。過疎化と向き合う現地の人たちの“町おこし”を通じて、彼女たちのひと夏の成長をドキュメンタリーで描いている。

今回の撮影では、彼女たちは台本を渡されなかったという。芝居のある映画の撮影とは知らず、純粋に“町おこし”のために奔走。大東演じる夏生は、コミュニティFM運営のために町に来た大学生という設定だが、彼女たちは大東が俳優だとは気付かず、本当に大学生と信じて接した。

“俳優・大東駿介”に気付かなかったというのは驚きだが、それだけ町になじんでいたということだろう。実際に、大東はクランクインする前から町のことを調べあげ、町に溶け込むように努力したという。役作りではなく“成り切る”ことに努めた。

台本があるようでないという状況の中で、大東は彼女たちから“素の言葉”で悩みを聞き、相談を受けた上で、ヒントを与え、彼女たちが自分で考え、行動するよう背中を押していく。まるで番組を進行するMCのように見えたが、大東は「近いですが、なるべくMCにならないように意識はしました」と語る。

「僕は彼女たちを誘導する神様ではない。だから、なるべく町のことは知りたいし、町をどうしたいのかという自分の意見も持たないといけないなと思った」。大東への取材は、映画の撮影が終わって何カ月もたった後だったが、記者の目からも俳優ではなく、那須烏山のことを真剣に考えている一住民と話しているようにも感じた。