演技+ドキュメントの映画で作る新しい形の「地方創生」

2018/09/15 09:00 配信

映画

【写真を見る】倉野尾成美(本人)がゲスト出演するラジオ局のシーン。大東駿介は「自分の言葉」でブースの外から指示を出していたという(C)2017『YOU達HAPPY 映画版 ひまわり』製作委員会


“自分の言葉”でリアルに


そして、せりふはあるが、なるべく“自分の言葉”で話したという。

「紙に書いてあること(せりふ)を自分が言うというのは、本の代弁者としてなので、“また聞き”みたいなことになってしまう。それと彼女たちの心から出た言葉は“同じ力”じゃない」と語る大東。この作品を通じて「役の言葉は自分の言葉であるべき」を学んだと振り返る。

その象徴的なシーンが、大東と西岡徳馬の二人だけのシーンだ。この映画で役者のみによるシーンは数少ないが、大東はここでも“リアル”にこだわった。

夏生が、町の重鎮(西岡)に直訴するという緊迫した場面。大東は撮影前、大先輩に対し「僕は台本通りにやらないです」と言い切った。それは、演技とは違う、町の人たちとの時間を過ごしてきた大東ならではの主張だ。

「そこだけ芝居みたいになっても恥ずかしい。役者だけのシーンが芝居染みているというのは、バランスが悪いなって思った」と明かす。役者だけのシーンだったが、逆に「ドキュメントと演技の融合」である今作の本質を見た気がした。

日本全国の問題


大東は監督やスタッフと話し合い、時にはぶつかり合いながら、高校生たちの成長を見守ったと言う。

約15分のインタビューの中で、大東は「本当」という言葉を15回も発している。使い方はさまざまだが、大東がいかに彼女たちの思いを大切にし、“リアル”を求めて撮影する中で悩み、考えたのか。この二文字がそれを表している。

さらに大東は、那須烏山の問題だけはなく、日本全国で起こっている問題だということも強調。この作品が、現在危機に直面している町や文化に何らかの影響を与え、考えるきっかけになればと願っている。

最後になったが、劇中ではTUBEの曲がふんだんに使われている他、前田がカメオ出演。物語に大きく影響するシーンではないものの、前田の演じる独特なキャラクターが今作のアクセントになっていることも付け加えておこう。TUBEファンにもお薦めの作品だ。

「地方創生」をテーマにした新しい形の映画。ぜひ、劇場に足を運んでみてはいかがだろうか。