桑田さんは打者の打ちどころで空振りをさせるような球を投げる投手だからね。9人いるとはいえ、1点取れればいいところじゃないかな。野球の打線は流れがあって、投手がそれほどでなくても流れが悪いと点が取れない。いったん悪い流れに入ると、そこから抜け出すのも大変だからね。ちょっと計算できないな、やってみないとわからない。
中学生たちは体が大きいのはすごいけど、走り込んだ方がいいね。パワーをつけようと思って大きくなりすぎるのも問題があると思うよ。
桑田さんもなにげなく「半年後にまたやりましょう」とか言うんじゃない?(笑) 中学生も桑田さんの球にスピードがないとわかると強引に打っていたからね。
マウンドに立つと気持ちは昔のままでも、いかんせんボールがなかなかキャッチャーミットに届かない(笑)。若いころはバーンと腕を振ったらバチーンという感じでボールがミットに収まったのですが、今はフーっと時間差がある感じでした(笑)。谷繁君と二人で配球を考え、18.44m(投手板からホームプレートまでの距離)の間であうんの呼吸で投げたのですが、なかなか厳しかったですね。
今回は野球界の後輩たちに「桑田と対戦した」という経験を積んでもらいたいと思い、投げさせてもらいました。僕も若いころ、例えばプロ1年目にテレビで見ていた大先輩と対戦させてもらった経験が自分の成長にすごく役立ちましたから。
この球場に来る車の中で、9人を相手に一つもアウトをとれないんじゃないかとも思いました。中学3年生の全国レベルの力を知っていますし、金属バットですから。でも、谷繁君が僕のいいところを引き出してくれるだろうと思い、ランナーを出しながらでも粘っていこうと思いながらマウンドに立っていました。
今日対戦して思ったのは対応力のすごさですね。自分の得意じゃない球種やコースが来てもカットできている。僕たちの中学生のころよりも上じゃないかと感じました。
たけしさんには「すごくダメだな、この桑田!」と怒られそうですね(笑)。でも、50歳を過ぎたおじさんが一生懸命やったというところは評価していただきたいです。何球かアウトローに決められたので、谷繁君のキャッチングでミットに入ったときは、僕の中にも喜びがありました。谷繁君は本当にいいキャッチャーで50歳になって受けてもらったというのは僕にとってもうれしかったです。
中学生たちには一人でも多くプロ野球選手になってもらいたいと思います。もしプロ野球選手になれなくても、野球を通じていろいろなことを学んで、どの世界に行っても活躍できる、そういう人間に成長していってもらいたいなと思います。
文=青木孝司
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