<試写室>「指定弁護士」リーガルドラマの新境地開拓か

2018/09/23 06:00 配信

ドラマ コラム

「指定弁護士」で主演を務める北川景子(写真左から2番目)(C)テレビ朝日

独断と偏見のレビュー


恥ずかしげもなく言うと「指定弁護士」ってこのドラマで初めてその存在を知った。これまでリーガルドラマも刑事ドラマも警察関係の作品も相当な数を見てきたのに、そのワードすら知らなかった。本当は出ていたのかもしれないけど。

ドラマチックな演出はあるにせよ、その仕事をとてもよく分かりやすく教えてくれるドラマだな、というのが第一印象だ。もちろん説明くさい感じというわけではなく。

弁護士と検察なんて敵同士というイメージしかないのだが、その2人がバディを組むという、これまでのドラマではあまり描かれなかったテーマだ。

北川演じる主人公・唯。若干ノせられやすいタイプなのかな?という感じはありつつも、内に秘めた正義感がフツフツと煮えたぎるさまが見て取れる。

危なっかしくもどこか応援したくなる一生懸命な感じが非常に感情移入しやすいし、そんな唯が指定弁護士としてバディを組む北村扮(ふん)する検察官・橘との温度感もちょうどいい。

映像を見る前は、てっきりこの2人がなんやかんやバディとしてやりとりしていくうちに恋に落ち…と思いきや、既に唯は結婚しており、相手はえなりかずき演じるパラリーガルの一ツ木隆司だと…?

某“鬼が多め”なドラマでは国民的美少女(出身)が妻で、今作では国宝級美女が妻とは。いやはやうらやましい。まあ、そんなこと言ったってしょうがないか。

夫婦の家には結婚式の写真が飾ってあり、事前にえなりは「“家宝”にしております!!」とコメントを残していたが、実は北川も夫婦役が「すっごくうれしかった!」とのこと。相思相愛のようで何よりだ。

夫婦のやりとりやバディの北村とのやりとりも良かったが、個人的には先輩こと羽田とのやりとりが何よりほのぼのしていて癒やされた。これ台本あるの?って思うくらい羽田先生の羽田先生らしいせりふ回し。ちょっとずつしか出てこないので一瞬でも見落とさないように。

そしてもう1人、松重豊演じるバーのマスター“吾郎”。松重相手に「吾郎ちゃん」って呼ぶとお酒じゃなくて、おいしいグルメが出てきそうだ。何で? 全然お客さんがこない“孤独な”バーのマスターだからって、皆まで言わすな。

それにしてもリーガルドラマって常連のバーがありがちなのはなぜだろう。ああいう店の常連って憧れる。まあ一滴も酒は飲めないけど。

その他、言ったことをすぐに忘れるおちゃめなボス弁役・中村梅雀、辞書で「威圧感」って引くと例文に「石橋蓮司のような雰囲気」と出てきそうな石橋の失言議員っぷり、ぜいたくな使い方・生瀬勝久の底知れぬデキる検察事務官、正名僕蔵や矢柴俊博の安定感のあるバイプレイヤーズぶり。

また、テレ朝ドラマ初出演という元TBSアナウンサー・安東弘樹がワイドショーの司会者役という、適材適所で配置。“脇を固める”という言葉がこれほど似合う面々はいないんじゃないか。

京都が舞台でもあるので当然美しい街並みや脚本・櫻井武晴の遊び心あふれるせりふの数々。あえて際立つように「真実はひとつ」ってある人物にいわせたのは、櫻井だけに多少なりともあの探偵を意識したのか? 気のせいか?

それにしてもあえて今回の指定弁護士が既婚女性だったのは、京都地検も登場するだけに、最終的には“主婦の勘”で起訴にもっていくためだったりして…? 

異議あり! 裁判長、筆者がオチを見失っています。

文=人見知りシャイボーイ