10月17日(水)、 東京・池袋のあうるすぽっとにて、新垣里沙主演の舞台「キ上の空論#9 みどり色の水泡にキス」の上演が開始する。
新垣は2012年にモーニング娘。を卒業したのを機に女優の道に進み、舞台を中心とした活動に移行。初期は手探りだったというものの、出演作は着実に増え、現在は年間10作品前後で主演、メインキャストとして立っている。
「キ上の空論」はオフィス上の空の中島庸介が演出する演劇シーン注目の演目で、「みどり色の水泡にキス」はそのシリーズ9作目。新垣は「#7 青の凶器、青の暴力、手と手。この先、」に続く2度目の主演を任され、ダブル主演の町田慎吾演じるマコトの妹・ミドリの役に就く。
小学5年生の時、妹のミドリに恋をしてしまったマコトは「輪廻」を信じ、ミドリを殺してしまう。ミドリが生まれ変わることで、血の繋がっていない「他人のミドリ」に会えると考えたのだ。そして6年後、高校生となったマコトの前にミドリが現れる――。ストレートな舞台だが、ちょっとファンタジー感もある物語だ。
13歳でモーニング娘。に加入した新垣は、本公演中の10月20日(土)に30歳を迎える。卒業から約7年が経つ中、映画を含めると50本以上の作品をこなしてきた彼女は今、どんな気持ちを持って芝居に臨んでいるのか。
今作への意気込みと共に、11月17日(土)に上映を控える村上虹郎、広瀬アリス主演の映画「銃」への出演についても話を聞いた。
――まず、今回のオファーが来た時のお気持ちからお聞かせください。
「やります!」って即答でした。中島さんの作品は「青の凶器」が初めだったんですが、その時ものすごい衝撃を受けたんですよね。いわゆる会話劇なんですが、その演出がすごく独特な雰囲気で。ナチュラルっていうのかな?「本当にお芝居なの?」って思うくらい、素な感じの進み方をして、その中で、手を叩く「パン」という効果音で瞬時に時間を経過させたり、別シーンに切り替えたり。他の舞台にはない手法とリズムですね。
普通は暗転でシーンや出ハケを切り替えていくんですが、それがほぼないんですよ。本当に大事なところ、意味がある暗転しか使わない。そういう演出が1回で好きになっちゃって。また中島さんの舞台に立たせてほしいと思っていたので、今回のお話は特に嬉しかったですね。
――「キ上の空論」の演目は、基本「青の凶器」と同じく、どれも会話劇の舞台ですね。
そうですね。その会話劇が日常的な素な感じで進んでいくので、「これ、最後どうなるんだろう?」って思わせるし、いきなりの急展開で「え!?」ってなる部分もあるし。そういう最後の最後まで結末が読めないところが面白い作品ですね。結末を知ることで、それまでの話の受け止め方が全く変わったりも。
例えば「青の凶器」は震災のお話だったんですけど、それが表には出てこず、笑いどころもある話だったんですね。それがどんでん返しで、振り返るとすごく重い話だったんですよ。
――舞台に大きな仕掛けがあるわけでなく、人の感情を大切にした作品作りだと感じます。文学的でもあるような。
奇麗な言葉や格好良い言葉はなくて、岐阜弁が共通で、ナチュラルというのはそういう特別感のない表現にも感じてもらえると思います。あと中島さんの作品には森脇洋平さんというアクト(舞踏家)の方がついていて、例えば海の中を表現するために役者をふわっと持ち上げたりするんですが、その技はすごいですね。決して派手ではないんですが、それだけに芝居を邪魔せず、空間を表現するんです。「キ上の空論」はセットをほぼ使わず、そういう役者の芝居と空気、光でシーンの背景を見せるのが特徴的な舞台です。
――今回の「みどり色の水泡にキス」、台本を読んだ時はどのような感想を持たれましたか?
どんな流れになるのかは見に来ていただきたいんですが、またなかなか裏切ってくれるなって。中島さんらしい、そういう結末が待っている物語だと思いました。
私はミドリという役ではあっても、1人のミドリではなく、7歳の子供であったり、学校の先生であったり、お母さんであったり、生まれ変わるたびに違うミドリになるので、1つの作品の中で本当に色々な役を演じている気分です。その時によりマコトの恋人であったり、そうでなかったりして、町田さんは出会うたびに変わるミドリに対して感情を保つのが大変だと思います。
私はそんなマコトに対して、いつでも彼が好きだったミドリに見えるようにというのを意識していこうと思ってます。
――稽古の感触はどうですか?
まだ全部に振りが付いているわけではないんですが、楽し過ぎです(笑)。良い作品になるなっていう気しかしないですね。人には大切な人が絶対いると思うので、ミドリをずっと愛し続けるマコトの70年の姿にお客さんはきっと共感されると思います。“生まれ変わり”という魂の話でもあるので、ちょっとファンタジーにも見えるんですが、ありえなくもない日常の話というのも引かれるポイントだと思います。
――今7歳を演じるというのはなかなか難しくないですか?
そこが劇なところですね。(映像のように)子役を使うのでなく、役者が7歳の子であるようにお芝居することが大事なんです。ランドセルを背負うので、そこはちゃんと似合うようにとは思いますが(笑)。もう30歳になりますし。
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