久保ミツロウ氏の同名人気漫画が原作のドラマ「モテキ」が、テレビ東京系で放送中。モテない人生を送ってきた派遣社員・藤本幸世(森山未來)に、人生初のモテ期が訪れ、慣れない恋愛に右往左往する姿を描いている。原作を生かしつつも、ドラマ独自の魅力を存分に打ち出している、本作の脚本・監督を務める大根仁氏に話を聞いた。
――これまでの手応えはいかがですか?
「第4話までがスタートダッシュでしたね。物語の構造上、序盤にモテ期が始まって女の子がワーッて来て、最初にピークがある。なので、その後は男女の面倒くさい話になっていってます(笑)」
――女性に振り回される幸世に共感する部分はありますか?
「幸世は原作者の久保(ミツロウ)さん(♀)を男性に置き換えたキャラクターなんです。僕が久保さんと人間的に似ているっていうこともあって、幸世の気持ちは全部分かりますよ。僕の解釈は全部脚本に落とし込んだので、その脚本を理解力のある未來君が読んで、自分なりの幸世を作ってきてくれています」
――4人の女性がとても魅力的ですが、キャラクターの個性の出し方はどう意識しているのでしょうか。
「キャスティングも演出の内なので、キャスティングの段階である程度、この役はこの人でやれるなという計算はしました。役者さんたちに伝えたのは『生々しい感じで撮りますよ』っていうことくらいですかね。実はそんなに全体的に細かい指示はしていないんですよ。しているように見えますよね? 僕もそう思うんですよ(笑)。まぁ、皆さんがうまいということです」
――挿入歌が重要な役割を果たしていますが、音楽と合わせて撮影することについて、難しいところはありましたか?
「いや、全然ないですよ。音楽のところは楽しくやっていますね。後から(曲を)当てているやつもあるんですけど、『格好悪いふられ方』や『強い気持ち・強い愛』、『ランニング・ショット』とかは脚本の時点で決めてありました。でも第3話のTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『ドロップ』は、単純に新井(浩文)君のシーンだったので、久々に映画『青い春』(※新井が出演)見てみたいなーと思って見たら、なんか(挿入歌だったこの曲が)合ったんですよね。撮影の後から曲が付いてきました」
――ジャンル、新旧問わず“通”な選曲が話題ですが、特に思い入れの強い曲はありますか?
「個人的には第1話の『強い気持ち・強い愛』ですね。幸世が亜紀(野波麻帆)とクラブイベントに行くシーンで、幸世が“前に行こう”と決心するのにふさわしい曲ってなんだろうなーと思って、'90年代のJポップ、Jロックで一番インパクトの強いものってなんだろうって考えたらオザケン(小沢健二)だったんですよ」
――大根監督が「モテキ」でやりたかったことは何でしょう。
「まずは、今までに見たことないような恋愛ドラマを作りたかったということと、テレビサイズではない生々しいキスシーン(笑)。あとは、純粋に素晴らしい音楽を素晴らしいドラマに当てたかったということですね」
――ご自身の作家性はいつもどのように表現しようとしていますか?
「自分は、そんな圧倒的なビジュアルの才能はないと思っていて、まぁ、映画とかドラマは好きだったんですけど、すぐ監督になりたい! ってなれた訳でもないですし。なので、作家性とかあんまり意識はしていないんですけど、“今までにないもの”というか“自分で見て楽しめるもの”を作ろうとは意識しています。唯一才能があるとしたら、役者にしても作家にしても音楽にしても、他人の才能を見抜いて、これとこれを上手にくっつけて打ち出すのは得意かなという気はします」
――ドラマは佳境に突入しますが、今後の見どころを教えてください。
「全シーン目開いて耳かっぽじって見てください! という気持ちです。ただ、脚本を書いていて思ったのは、ドラマの面白さで大きな要素って、主人公自身と登場人物との関係が成長していくことじゃないですか。『モテキ』ってそれがどっちもないんですよ。最後は辛うじてちょっと成長するんですけど、普通の人間はとっくに踏み出している一歩を、幸世は30歳にもなってやっと踏み出すぐらい。モテ期が一斉に始まって一斉に終わっていく、よ~く見てみると何も変わっていないという(笑)。でも、その辺が意外に新しいと思いますよ」
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)