野木亜紀子が明かす、ドラマ企画現場の“沼”「そういう考えは、視聴者をなめていると思う」

2018/10/20 12:30 配信

ドラマ インタビュー

NHK総合で10月20日(土)と27日(土)に2週連続で放送される、北川景子主演の土曜ドラマ「フェイクニュース」(夜9:00-9:49)。ネットメディアの女性記者が事実を追い求めて孤軍奮闘する本作の脚本は、今注目の人気脚本家・野木亜紀子氏が手掛けている。

2010年の第22回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞したのをきっかけに脚本家デビューを果たし、「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年、TBS系)、「アンナチュラル」(2018年、TBS系)、映画「図書館戦争」シリーズといった数々の話題作を世に送り出してきた野木氏。最新作「フェイクニュース」へ込めた思いや、ドラマ作りの際のこだわりについて聞いた。

「フェイクニュース」を執筆した野木亜紀子にインタビュー


「フェイクニュース」は「人が死なない『アンナチュラル』」


──ネットメディアの世界を舞台にした「フェイクニュース」ですが、取材会では「社会派と銘打っていてもエンターテインメントドラマです」とおっしゃっていましたね。

「社会派」って言っちゃうと何だか難しそうだし、「フェイクニュース」には実際に笑いどころもあるので、エンターテインメントとして楽しんでいただけたらと思っています。「アンナチュラル」もエンターテインメントとして書いていたんですけど、今回は人が死なない「アンナチュラル」っていう感じですね。今までネットメディアを舞台にしたドラマはほとんどなかったと思うので、そこも楽しんでいただきたいです。

──ネットメディアを取り上げようと思われたきっかけは何ですか。

もともと「誤報」というものには興味があって、日本報道検証機構に寄付金を出したりしていたんですよ。情報を検証する動きは必要だし、これをドラマにしたら面白いんじゃないかとは思ってました。

今回、プロデューサーの北野(拓)さんとお話をしていて、興味のあることとして合致したのがフェイクニュースだった。北野さんが報道出身だったというのもあって、北野さんとならリアリティのあるドラマが作れるんじゃないかなと思いました。

それが“逃げ恥”の直後くらいでしたけど、企画の成立まで少し時間がかかったり、私も「アンナチュラル」を書いたりしていて。放送が今年の10月って決まったときには、ネットメディアをめぐる状況がガラッと変わっていたんです。トランプ大統領が自分に不利なことを書くメディアを「フェイクニュース」と言い出したり(笑)。当初はフェイクニュースとはなんぞやというようなプロットだったんですが、これはダメだなと思って、去年の秋くらいに「プロットを全部書き直したい」って言って、改めて取材をして新しく作ったのがこのドラマです。その際に、いま描くならば外側からネットメディアを見るのではなく、内側の人を中心に据えたほうが新しいものができるんじゃないかということで、ネットメディアで働く主人公にしました。

NHKで放送することに意味がある


──NHKドラマは初執筆となったわけですが、そのあたりについて思われることはありますか?

実は題材的に、地上波のテレビでは難しいかなと思っていたんです。WOWOWとかネットドラマじゃないと企画が通らないかな…なんて。でも、そういう限られた人たちが見るメディアでやっても、本来このテーマを伝えたい人たちに届かないなと思ったんですよ。

NHKで放送することで、いろんな人に見ていただけるのは良いですよね。もちろん全ての視聴者を対象にしていますが、ネットに詳しくない人にこそ伝えたいし、詳しい人は詳しいなりに「あー、あるある」って楽しんでいただけたらと思います。

──最初にお聞きした、社会派ドラマではない、エンターテインメント性はどんなところにありますか。

フェイクニュース」は、普通に人間ドラマです。題材が社会問題ではあるけれど、登場人物たちを追い掛けていく物語です。

ドラマが発表された時に「テレビ局がネットを批判するためにつくったプロパガンダドラマだ!」と一部で騒がれもましたが、まったくそういう話ではないです(笑)。この2018年に、「ネットは悪である」なんていう一元的なドラマを作ったら、そのほうがヤバいんじゃないですかね。