──今回、本誌「週刊ザテレビジョン」の「テレビの開拓者たち」という連載ページへのご登場をお願いしたときに、「私は開拓者ではありません」とおっしゃっていました。「開拓者ではない」としたら、どんな脚本家でありたいと思われますか。
最後の最後まで、ひたすらに「どうやったら面白く見ていただけるのか」ということを考えています。自分が視聴者歴が長かったというのも、あるかもしれません。「テレビを変えてやるぜ!」みたいな意気込みもいいですけど、むしろ「当たり前に面白いものを作る」っていうことが大事なんじゃないかと思うし、そこを忘れると足元をすくわれてしまいますから。そういう意味では、「当たり前の発想に戻る」ことがマストで、その上で、新しい視点をどう入れていくか。
──視聴率のことばかりを気にするのではなく?
そうですね。結構、企画段階から分かりやすさを求められることが多いんですよ。でも、こうすればウケる、こうすれば視聴率が獲れるっていうロジックにハマっていくと、全てが単純化されちゃうんですよね。「わかりやすいものしかウケない」っていう考えは、視聴者をなめていると思うし、実際に視聴者はそんなに馬鹿じゃない。だから、自分が面白いと思うものを作るしかないなって思います。過去の開拓者の方たちも、みんなそうだったんじゃないでしょうか。
人間の感情は100年前からそうそう変わるものではないので、実はドラマツルギーはオーソドックスなんですよね。それをどういう切り口や視点で見せていくか考えれば、いくらでも新しいものは作れる。その切り口が、「フェイクニュース」ではネットメディアであったということで。
──これまで脚本家として活動してこられて、ターニングポイントになった作品は何ですか。やはり“逃げ恥”でしょうか?
“逃げ恥”に関しては、それほど“ターニングポイント感”はなかったですね。世間が盛り上がってるなーなんて、どこか他人事みたいな感じでした。
ターニングポイントということでは、「空飛ぶ広報室」(2013年、TBS系)です。一人で連ドラ全話を書いたことのない脚本家に、いきなり日曜劇場を書かせるんですよ。その前にTBSが制作した映画の「図書館戦争」を書いていて、同じ有川浩先生の原作ということで選んでいただいたんですけど、抜擢してくださった方には全話書き終わってから「もしダメだったら、自分が指導しなきゃいけないかと思ってたけど、何も必要なかった」と言っていただきました(笑)。あのドラマに起用していただいたことは感謝してます。
──「空飛ぶ広報室」の新垣結衣さんとは、10月クールの「獣になれない私たち」(日本テレビ系)まで、ご縁が続いていますね。
日テレでずっとバラエティーのプロデューサーをしていた松本(京子)さんの、初プロデュースドラマが新垣さん主演の「掟上今日子の備忘録」(2015年、日本テレビ系)だったんですよ。ずっとドラマをやりたいって言っていながら、「世界の果てまでイッテQ!」(毎週日曜夜7:58-8:54、日本テレビ系)が当たっちゃって、バラエティーから離れられなくなっちゃった人なんですけど(笑)。その松本さんが「図書館戦争」や「空飛ぶ広報室」を見ていて、「掟上今日子」の執筆を依頼されました。「獣になれない私たち」も、プロデューサーは松本さんです。「フェイクニュース」や「アンナチュラル」とはまた全然違うアプローチの脚本なんですが、今までにない新しい新垣さんの魅力を見ていただけたらと思ってます。
──今後 挑みたい作品像を教えてください。
SF、ジュブナイルものは書いてみたいですね。単純に私が好きだからという理由で! SFもジュブナイルも通らない企画ナンバー1だったりしますけど(笑)、取りあえずここまで一通りのジャンルはやってきたので、まだ扱っていないジャンルを書いてみたいです。2020年くらいまでは予定が詰まってるので、その後になりますけど…。
取材・文=青木孝司
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