──ちなみに、テレビドラマのプロデュースをしてみたいという思いはありますか?
お声は掛かるんですが…。以前「血界戦線」というシリーズアニメを作ったことがあって。ある種時代とセッションしながら状況によって変わっていく面白さを楽しみつつも、僕の場合作り方が映画なので、11本の映画を作った感じになっちゃって、ヘトヘトでしたね…。その時に、「この作り方はもうできないな」と(笑)。
ただ、「男はつらいよ」だって連ドラから始まっている映画ですし、企画がシリーズに向いているものだと思えばいつか挑戦してみたいとは思います。
──川村さんが作品をプロデュースする上で、これだけは大事にしたいという指針のようなものは何ですか?
“自分が見たいものを作る”ということです。自分が見たい映画を作っているし、読みたいストーリーを小説として書いている。ただ、考え始めると、これが結構難しいんです。
インターネットをはじめとして、これだけ面白いものが世の中にあふれている中で、どうすればわざわざ映画館や書店に行って、自分が作った映画や小説を選んでもらい、楽しんでもらえるのか。それをひたすら煎じ詰めて考えていくので、企画が固まるまでがすごく長いですね。そのプロセスのなかでようやく“自分が見たいもの“が観客や読者に面白いと思ってもらえるものになっていく。だから時間が掛かりますし、効率が悪いです(笑)。
――川村さんが受け手として、見たくなる、読みたくなるものの条件を教えてください。
いくつかありますが、一つはタイトルです。タイトルがフニャフニャしているものはダメだと思う。タイトルを決めてそれ相応の中身を作るパターンがあれば、内容からタイトルをひねり出すパターンもあるんだろうけど、どちらにしてもタイトルに魂があるような気がしています。
「億男」もすごく悩んで付けたタイトルでした。一つヒントになったのは、アメコミヒーロー映画でした。バットマンもスパイダーマンも人が羨む能力を手に入れているのに、力を手にした本人はあまりうれしそうじゃないし、苦悩している。お金もそうなのかなって思ったんですよ。お金はある種、人を特別にするのと同時に苦悩もさせる、超能力みたいなものなんじゃないかと思って、「億男」というタイトルにしました。
こういうタイトルを付けると、物語や文章もタイトルに引っ張られて固まっていきます。だからすごく大事にしていますね。
取材・文=斉藤俊彦
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