NHKのショートドラマ「祝女」をはじめ、「イタズラなkiss」、「アラサーちゃん」、「南くんの恋人」、「わたしのウチには、なんにもない。」など多くのドラマ脚本でも活躍中の新井友香が主宰する劇団宝船の本公演が12月19日(水)よりスタート。前回より7年ぶりの本公演となる。久しぶりの公演について、新井に思いを語ってもらった。
「最後の公演をやった時には、まさか7年も空くとは考えていなかったんです。子供がいてもなんとか、1、2年に一度は公演を打ちたいと思っていましたが、二人目を産んでから、私と夫の両方の母に仙台や滋賀から交互に来てもらっては子供を見てもらいながら、ドラマの脚本などを続けていく中、一か月ほぼ夜家に帰れない舞台公演は、無理だなと。役者業よりも、書き続ける日々だったので次第に人前に出るのが苦手になってしまい、いつか公演をやりたいと思いながらも、どんどんハードルが上がってしまって。ですが、仕事として発注を受けた本だけを書いていると、どうしても舞台をやりたくなるんですよね。とはいえ今までのように身近でタイムリーに恋バナを聞ける環境でもなく、次に書くとしたら、恋愛ものを書いたらウソになるような気がしていました。恋愛よりも人生の重さととともに人生のはかなさ、くだらなさ、でも、その中で光り輝く一瞬を描きたいと思っていました」。
まだ、女性の幸せはいい相手と結婚することといわれていた時代に生まれたヒロイン・十和子は、その時代にささやかな抵抗を試みるが、うまく行かず、不運が訪れるたびに、「ああ、またか」と思いながらも生きて来た。その設定は、新井の母親を参考にしているという。「昭和17年生まれで命からがら満州から引き揚げ、内地に帰り、仙台のミッション系女学校から薬科大へ行き、東京で薬剤師になるという設定は私の母から小さいころから聞かされていたので。母の人生そのものではありません。ひどい目にあってはあがき、やっとの思いでそこから逃れて幸せになろうとしたら、そこでまた思いがけない不運が訪れて、それを繰り返す。『ああ、またか…』と、何度も思い、それでも『ああ、またか…』とは言いたくない、言うものか…となんとか生き抜こうとするヒロインです」と、情念の強い女性を描くのが得意な新井らしい内容に期待が高まる。
劇団宝船の作品には毎回さまざまなタイプのダメ人間が登場し、そこがまた見どころの一つだ。
「そもそも自分のことをいつも『ダメだダメだ、クズだ』と、責めながら生きているので、ダメ人間を許すことが、自分を許すことにもつながっているのかもしれません。自分自身も努力して、ちょっとだけでも”ダメ”から抜け出せた時の喜びを糧に、生きています(笑)。ダメな人間にはダメなりに共感できる理由があるので、そこを理解したいと思うのですが、やはりずっとそのままでいるよりは抜け出す努力をしたり、あがくべきだと思っています。逆にどんな立派な人にも、ダメな部分があったりするような気がします。ダメ人間をダメと追及して否定するのではなく『そのダメ、あるある! わかるわかる!』と笑ったり、認めることの中に宝がある、そう考えることも必要ではないかなと。
先日、9歳の娘に『立派な人よりちょっとくらいダメな部分がある人の方が安心する』と言われた時は、そういうことは30歳過ぎてから言うくらいでいいのでは?と、ちょっと心配になりましたけど(笑)」
今回の劇団活動再開をきっかけに、来年以降も定期的に上演となるのだろうか?
「今後も、1、2年に一度、できればもっと活動したいです。やはり演劇をやっている時はとても幸せです。取り上げたいテーマというか、次回作は、ちょっとした金銭感覚の違いから起きる姉妹の悲劇『カネ、三姉妹』、もしくは自分としてはただ誠実に頑張って生きているつもりなのに、周りの評価がどんどん変わって行く男性が主人公の『オレの株価』などをぼんやり考えています。でも、ベタな不倫ものもやりたいかな」
ぼんやりなんてとんでもない! ここまで企画が決まっていれば、毎年上演できるのでは!?
今回の新作は下北沢にて12月24日(月)まで上演。古巣に帰ってきた新井のこん身の舞台をお見逃しなく!
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