初回で訪れたのは、沖縄・那覇の城西小学校。当初は名建築を訪ねる旅番組として企画された番組だったが、「沖縄から始まったロケが熊本あたりまで来たところで、僕は飛行機で取材に通うことに疲れてきて…(笑)。
それでプロデューサーに(近郊でロケができるし自分が一番興味を持っている)個人住宅の取材にしましょうよ、と提案したんです」という。
その後、渡辺の“個人住宅好き”という理由もあり、公共建築から徐々に個人住宅を訪れる番組とシフトし、今では住宅専門番組となった。
そして台本や現場下見、打ち合わせは一切なく、トイレや風呂はもちろん、キッチンの収納までも遠慮なくオープンしまくる渡辺の独自の“取材スタイル”が好評を博してきた。
さらに、渡辺が毎回「いいですね~!」という褒め文句で、窓を褒め、椅子を褒め、手すりを褒め倒す“褒め芸”もこの番組の醍醐味(だいごみ)に。
渡辺は「僕は日本の住宅がもっともっと良くなればいいと思ってこの番組をやっています。施主に選ばれた設計家が一生懸命考えて建てた家なのだから、僕はうまく仕上がっている部分を褒めて、それが放送されて評判になればいい。
そうすることでその建築家を育て、ひいては住宅事情がよくなっていけばいいと思っています」と番組にかける熱い思いを語った。
30年間、“狭小住宅”や“屋上庭園”、“省エネスタイル”“スキップフロア”“アイランドキッチン”など、さまざまな形態の住宅を見てきた渡辺は「この30年間で家が使いやすくなりました。長屋から団地への間取りの変化=食寝分離がエポックメーキングな出来事だったことを考えたら、今の進歩はすごい。
変形した土地にも創意工夫次第で居心地のいい空間を作ることができる。そういう建築家の感性や工夫の数々を挙げたらきりがないですね」と感心しきり。
また、「『建もの探訪』を見てくれていた子どもが番組の影響で建築家を目指し、やがて成長して夢をかなえた彼が設計した家を取材に行ったことがあります。彼はロケ現場の隅の方に立って感激、緊張していた…」と感激の再会エピソードも話し、「この番組が育てた青年たちとのこうした出会いは、涙が出るほどうれしいです」と喜んだ。
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