2月9日(土)から、照屋年之(=ガレッジセール・ゴリ)監督、奥田瑛二主演の映画「洗骨」が全国で公開される。
作品のタイトルにもなっている“洗骨”は、沖縄の離島や奄美群島などに今も残っている風習。物語の舞台となる粟国島(あぐにじま)では、島の西側に位置する“あの世”に風葬された死者は肉がなくなり、骨だけになった頃、縁の深い人たちの手で骨を洗ってもらうことで、ようやく“この世”に別れを告げることになる。
同作は洗骨という風習を通して、バラバラになった新城家の3人が再び寄り添っていく姿を描いた心温まるヒューマンドラマとなっている。
今回は、名古屋で美容師として働き、母・恵美子(筒井真理子)の洗骨のため粟国島に戻ってくる長女・優子を演じた水崎綾女にインタビュー。出演を決めた際、女優業について悩んでいたという当時の心境や、そんな水崎に影響を与えた照屋監督とのエピソードなどについて話を聞いた。
――最初に台本を読んだときの感想はいかがでしたか?
素晴らしい作品に出られるなといううれしい気持ちでした。テーマは重いものではあるんですけど、監督の脚本でコメディータッチになっていて、笑いあり涙ありというヘビー過ぎない作品でいいなと思いました。
――洗骨という文化を知ったときはどう思いましたか?
単純にびっくりしました。劇中のセリフにあるように「法律に引っ掛からないの?」って思いましたし、日本って火葬だけじゃないんだっていう驚きもありました。
でも、洗骨って知れば知るほどすてきな文化だなって。ちょっぴり怖いかもしれないですけど、スピリチュアルで美しい文化だなって思いました。
――では、優子を演じた感想を教えてください。
すごく楽しかったです。監督もキャストの皆さんも大好きなので、その場に自分がいられることがすごくうれしくて。
この作品の撮影に入る前は、いろいろ女優として悩むこともあり、このままこの仕事を続けていいんだろうかって考えてました。
2017年も、主演をさせていただいた「光」でカンヌ国際映画祭に行って、エキュメニカル審査員賞をいただいたりと仕事は順調で、みんなには「よかったね」とか「これからは順風満帆でしょ」って言ってもらえたんですけど、でも、そういう賞って一瞬のものだから、私はある意味終わりを迎えたように感じていたんです。
この作品もやるかやらないか考えていたんですけど、ちょっと疲れていた時期にゴリさんとお会いする機会があって、そのときにすごくたくさんいい言葉を掛けてくれたので、いつか恩返ししたいなっていう気持ちがあったんです。
ゴリさんが映画を撮っていることは正直知らなかったんですけど、監督がゴリさんだって聞いた瞬間に「やります!」って答えていたので、私にとってもターニングポイントだったなって思いますね。
「光」で芸能生活の第1章を終えた感じがして、これは第2章のスタートっていう感じがしました。物語でも出産や命の誕生について描かれているので、第2の人生のスタートにふさわしい作品だったのかなって思います。
――その疲れていたという時期にゴリさんから掛けてもらった言葉の中で、印象に残っているのは?
相方の川田さんとの話を聞いてすごく共感しました。昔、ゴリさんも人間関係や仕事に疲れて「もうどうしようかな」っていうときに、川田さんが「本当にもう嫌だったら、俺も一緒に諦めて沖縄に帰るから」ってゴリさんに言って、その言葉があったから、コンビが20年続いているというお話でした。私もそれを聞いて、すばらしい関係だなと思いました。
私が疲れていたとき、みんな「頑張れ」って言ってくれたんですけど、頑張ってる人に「頑張れ」って言っても、つらいだけじゃないですか。
そういうときに、ゴリさんに「十分頑張ってるんだから、もう頑張らなくていいんじゃない?」「休むのもありなのかもね」ってさらっと励ましていただいて、何か心がホッとしたというか、肩の力が抜けたというか、「そうだよね。頑張ってたよね、私」みたいな感じでしたね。
結構タフだし、頑張れるタイプなんですけど、そのときはいろいろなことが重なり過ぎて疲れたというか、何にもやる気がなくなっちゃって。今までやってきたことが正しいのか、正しくないのかも分からなくなっちゃったんですけど、「洗骨」で改めて自分を見詰め直せたというか、今まで自分がやってきたスタンスや感覚が、やっぱり間違ってなかったんだなっていうことに気付けました。
――先ほどの言葉を借りると、第1章の確認になったんでしょうか。
そうですね、答え合わせじゃないですけど、そういうことができました。頑張り過ぎていると、自分にどのくらい負担が掛かっているのかとか、何も見えなくなっちゃいますし、負担が掛かっているのが分かっていても、周りに迷惑が掛かるだとか、そういうことで休めなかったりしたので、15年の集大成みたいなものが終わって、リラックスしてできたなって思います。
でも、撮っているときはまだ「この作品が最後でいいかも」って思っていたんです。“有終の美を飾る”みたいな(笑)。だけど、撮っていく中で、こんなにすてきなスタッフさんやキャストがいるんだって思ったら、もうちょっとだけ頑張ってみてもいいのかなって。
それは今までみたいに頑張るんじゃなくって、ちょっとやり方を変えて、自分の足で一歩一歩進んでいくというか。今まではどちらかと言うと、決められた仕事を一生懸命こなすっていう作業だったと思うんですけど、この作品は初めて自分で「やりたい」「これはやらなきゃいけない」って自分の意志で決めた最初の作品なので、今までとは違うなって思います。
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