映画「七つの会議」野村萬斎＆香川照之『これはスーツを着た平成の侍たちの時代劇』

現場は意外とリラックス

――そうなると、現場はとてつもない緊張感に包まれているのではないでしょうか？

萬斎「それが意外とそうでもないんですよね。　みんな普通に、自由にされていたというか(笑)。でも、それこそラグビーボールが外にあるときは、みんなリラックスしているけれど、ボールがフィールドエリア内に入ってスクラムを組んだ途端に全力でエネルギーを放つという感じでした」

香川「今回の出演者はベテランの方が多かったですし、皆さん慣れてらっしゃたから、そこまで緊迫する感じはなかったかもしれないですね。でも、これまでには福澤組に萎縮してしまう方も結構いらっしゃいました」

――確かに福澤監督の作品、特に池井戸潤さん原作の作品は、映像で見ていても俳優さんたちのパワーがものすごくて、現場で萎縮してしまう気持ちも分かる気がします。

香川「でも、萬斎さんに関しては、一切そんな感じはなかったですね。しかも、萬斎さんは(映像における)現代劇のサラリーマン役はこれが初めてですよね？」

萬斎「そうです」

香川「これまでも何かに憑依されたりだとか、難しい役に挑戦されてきたとは思いますが、今回演じられたサラリーマンのように普通の人間を表現することが一番難しいと思います。しかも、ジャイさんという特殊な撮り方をする監督の現場ですからね。にも関わらず、監督の意向をすぐさまキャッチされ、八角という人間を見事に演じられている姿を見て、萬斎さんがこれまでに積み重ねられてきた芸道への研さんを瞬時に感じました」

萬斎「それこそ香川さんはお芝居はもちろん、映像の画角(自分が撮られている角度)に対しても隙がなく、現場でご一緒しても思いましたが、試写を見てあらためて福澤組のことを本当に知り尽くしてらっしゃるなと思いました」