――ネタバレになってしまうので、あまり詳しくは言えませんが、周囲が思っている八角のイメージと、萬斎さんのおっしゃっているダークサイドのギャップが怖かったです。
萬斎「あるシーンでは『ターミネーター2』(1991年)だと思いながら八角を演じていたのですが、僕は人を怖がらせることが好きなので、ちょっと調子に乗りすぎたかなという思いがありつつも(笑)、演じていてとても楽しかったです。
あと、全体としては、香川さんや(八角がパワハラで訴える直接上司役の)片岡愛之助さんたちと相まみえると、セリフの一つ一つに切れ味があり、日本刀で切り結んでいる感じがしました。さらに、それをどう受け、どう返すのかにも間合いがあり、自分の中ではスーツを着た時代劇という感覚がありました」
香川「なるほど! まさに萬斎さんのおっしゃるとおりだと思います」
萬斎「劇中に出てくる“御前会議(=東京建電の親会社で行われるトップクラスだけでの会談の場)”という構造もそうですし、平成の企業侍たちのお話という気がしていて。昔、大河ドラマ『花の乱』(1994年NHK総合ほか)という作品で、京マチ子さんや萬屋錦之介さんといった往年の名優さんたちと共演させていただく機会があったのですが、今回、香川さんたちとご一緒させていただいて、そのときと同じような感覚がありました」
香川「ジャイさん自身も勧善懲悪であったり、時代劇の図式がお好きだし、日本人としても『水戸黄門』的なものが好きなところがありますよね。今回の映画の愛之助さんもそうですが、『下町ロケット』に出演されている尾上菊之助さんにしても、ジャイさんが歌舞伎役者さんを起用したがるのも、そういうところにあるのかもしれませんね。萬斎さんに言われるまで気づきませんでしたが、確かにこれはスーツを着た平成の侍たちの時代劇なんだと思います」
取材・文=馬場英美
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