「第99回ドラマアカデミー賞」で監督賞を受賞したのは、「今日から俺は!!」(日本テレビ系)の福田雄一、鈴木勇馬両監督。作品を賞賛する声の中には「ドラマというだけでなく、テレビ番組として理想的な娯楽作品だった」と、ドラマという枠を超え、エンターテインメント作品として評価する声もあった。演出と共に脚本も手掛けた福田監督に、撮影中に感じた“手応え”やキャストたちへの思いを聞いた。
――まずは受賞されたご感想をお聞かせください。
うれしいです(笑)。テレビ番組として成立しているという声はすごくうれしいですね。僕は元々バラエティーの放送作家なので、基本的に家族そろって楽しめるテレビ番組が一番いいと思っていて、ドラマも同じ姿勢で作っているので、そういう捉え方をしていただけたのはすごくうれしいです。
――元放送作家の視点として、まず意識される点はどこですか?
放送時間です。そこから視聴者層を考えます。今回は日曜の夜だったので、家族の在宅率がすごく高い。ですから、家族そろって見られるドラマということを意識しました。僕らの子供のころは家族そろってテレビを見るのは当たり前でしたが、今はテレビがついているのに、それぞれスマホの画面を見ているということも多いらしくて。僕はやっぱりテレビが好きなテレビっ子だから、みんなで一つのテレビを見て、やんや言い合う――そういう幻想をいまだ捨て切れないんですよね。だからこそ、日曜夜という放送時間は理想的な枠でした。
――撮影中から、これはいけるという確信はあったのでしょうか?
自信はありましたし、撮れば撮るほど、そう思えていきました。何がそう思わせるかというと、俳優さんたちが面白いと思っていることと、僕やスタッフが思っていることがガシガシ噛み合う瞬間がたくさんあったんです。ですから、みんながみんな、これはいけるなと思っていたはずです。
でも、一つ悔しいことがありまして。今回は放送前に撮影を終えていたのですが、原作にはない伊藤(伊藤健太郎)と京子(橋本環奈)のイチャつきシーンを入れていたんですね。これは伊藤のキャラクターに多面性を持たせるために加えたシーンで、伊藤は真面目な曲がったことが嫌いな性格ですが、京子の前に来るとデロンデロンになってしまう。京子もカンカン(橋本環奈)が演じるにあたって、こういった一面があるとさらに面白いだろうなと思って作ったシーンだったのですが、SNSなどを見ると視聴者の皆さんにすごく受け入れられていたんですよ。放送しながら撮っていたら、あそこをもっと膨らませたのになって思いました(笑)。
――福田さんの作品に出演された俳優さんは、口を揃えて「まず最初は自由にやってくださいと言われる」と言いますが、それは監督のポリシーなのでしょうか?
いや、実際に「自由にやってください」と言っているわけではないんですよ(笑)。ただ、彼らが考えてきたプランを一回僕に見せてよというだけであって。こだわりというと大げさですけど、とにかく自分の考えたことを俳優さんに押し付けないっていうのが絶対的に守っているルールです。僕が「こうしたいんだけど」と言ったら、それをやるのがマストになっちゃうじゃないですか。でも、俳優さんは俳優さんで考えてくるべきだと僕は思うし、俳優さんってそういう仕事だと思うから、僕のプランを押し付けないことは絶対に守っています。そこで面白いアウトプットをしてくれるなら、それはそれでいただきですし(笑)。
これは俳優さんだけでなく、スタッフに対しても同じで、僕はカット割りができないのですが、代わりにカット割りを考えてもらったカメラマンにこう言われたことがありました。「最初はむかついたけど、俺はこういう画が撮りたい、俺はこうしたいっていう気持ちを思い出させてもらって、すごくうれしかった」って。僕は助監督から上がってきた職業監督ではないので特殊かもしれませんが、監督の僕一人で考えるよりみんなで考えた方が面白いものができるのは当たり前。みんなで意見を出し合って、僕がベストのものを選択すればいいだけなんです。それが上手くいっているのが、「福田組」というものの正体なんだと思います。
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