――今回のスペシャルの台本を読まれた時の感想は?
一言で、実に「遺留捜査」らしい物語だと思いました。前回のスペシャルでは、“仮想通貨”と“天狗伝説”という、これまでの「遺留捜査」からは想像もできないような題材を、遺留捜査らしく描くという、実に斬新な作品だったんですけど、今回はスタンダードな遺留捜査らしい展開になっています。
現場に残っていた遺留品と、そこへつながっていく人物や真相が物語を綾なしいくという構成は、視聴者の皆さまにとってもなじみ深い「遺留捜査」スペシャルになるのではないかと思っています。
――オーケストラが物語に深く関わってくる今作では、指揮者にも挑戦されましたね。
素直に緊張しました(笑)。やはりプロのオーケストラの方々の前に立って指揮棒を振るというのは、ドラマの一場面といえども、これまでにない緊張感を味わいました。
タクトに触ることすら初めてだったのですが、オーケストラの方々は当然ながら、僕がド素人だと言うことをくんだ上で演奏してくださいました。
自分の指揮に合わせて演奏が流れていくという経験は、予想していたより、もっと気持ち良いものでした。糸村として演じながら、僕自身はひそかに心を打ち振るわせていました(笑)。
――スペシャルの見どころは?
やはりオーケストラシーンです。幾度も出てきますが、プロの方々にお集まりいただいてしっかりと作り上げた、いわゆる今作の骨子となる場面だと思います。そこに糸村がどう絡んでいくのかも含めて、ご覧いただきたいと思います。
――間もなく“平成”が終わりますが、糸村としての進化はありそうですか?
変わらないことが、糸村の特質というか本質なのではと思っています。彼が誰かに出会って感心したり、彼の心に深く刻まれるような何かがあっても、彼の人となりに大きな変化をきたすようなことはないような気がしているんです。
例え平成から新しい時代に移ろって、「遺留捜査」がそれでも続けられていったとしても、糸村は“糸村イズム”とでもいえるものを貫いてほしいと。
それが「遺留捜査」なんだと感じています。世が変わろうとも、糸村には変わらず愛すべき“変人”でいてほしいと思っています。
――上川さん自身が役者として“平成”にやり残したことなどはありますか?
僕が「キャラメルボックス」という劇団に入ったのが1989年、平成元年となった年なんです。
これまでの役者としての時間は、平成と共にあったということにちょっとびっくりするんですけど、だからこそ、むしろ“やり残した感”というのはないんです。
役者としての時間を、平成という時代の中で過ごせたということの充足感やありがたさがあるにせよ、何かをやり足らずのままで過ごしてきてしまったのではないかというような、積み残し感はないんです。
本当に役者として幸せな時間を過ごさせていただけたという思いでおります。
文=neneko
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