――ちなみに、作詞の方はまだやる気が湧かないですか?
ですね(笑)。やる気がないというより、漠然と作るのが無理なんです。田中れいなの作詞で作品を出すと言われたら頑張れると思いますけど、今は他にやるべきことがたくさんあるし。
テーマを決めて、1番では物語のどこで終らせて2番に繋げるか。落ちサビの言葉も大事だし、作詞はその考えをまとめるまでが大変で。テーマにしても、考えなしだと薄っぺらい内容になるし。私はドラマが好きだから、そこからよくテーマを持ってくるんですけど、一番は自分の経験が足りないことですね。言葉も少ないし。
――作詞は言葉の装飾より、伝えたいこと、その場の光景や気持ちを伝えることが一番大事で、それはできているだけにもったいなと思います。
今、私が一緒にお仕事をしていて作詞の能力があると思う方って、普通の会話の時にも、普通の言葉でないものを差し込んでくる人なんですよ。それこそ新曲を書いてくれた新良エツ子先生がそういう人で、「その引き出しはなんだ!?」っていつも驚かされます。先生は私のことも良く知ってくれているから、“田中れいな”からかけ離れないイメージの中で、フィクション、ノンフィクションを織り交ぜてくるんです。
先生がくれる歌詞は、ただ歌うんでなく、ミュージカルみたいにお芝居っぽく歌ってみようとかを想像できるものなんです。これ、歌っている方にしか分からないかもですが、歌っていて気持ち良い文字というのがあるんです。逆に、この文字で終るのは喉が閉まって伸ばしづらいとかも。そういうのも考えてくれるので、気持ちも乗るし、歌っていて楽しいんですよね。
もし作詞を再開するにしても、誰でも思いつくありきたりの言葉でなく、「何、この言葉!」って思えるような魔法の言葉で作りたいし、発声も考えた歌詞にしたいです。なので、いつになるか分かりません(笑)。
――歌も作詞も芝居も、田中さんは自己評価が低すぎませんか。
低いですよ! 全然ダメって思いますもん。ステージには自信を持って上がりますけど、終わるたびに反省ばかりです。それに、満足したら終りじゃないですか。「れーな、めっちゃ上手くない!?」みたいな勘違いはしたくなくて、もっと上はあるはずだと常に思ってます。
リハと稽古、舞台もライブもその日にビデオを見返すんですけど、上手くできたと思う部分より、イマイチだと思う部分ばかりです。そのイマイチにリハの段階で気付ければ良いんですけど、その時はそれが精一杯の自分なんですよね。歌もお芝居も出せる力が低いからそうなるわけで、それって経験なのかなあ…。
「良かったな、楽しかったな」だけで終わらせないように、日々頑張るしかないですね。
取材・文:鈴木康道
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