――横田早紀江さん役のオファーを受けたときの感想は?
正直、難しいなと思いました。報道番組を通して拉致事件のことは何となく知っていましたが、詳しいわけではなかったですし、多くの人が知っている人物を演じるのが違和感なくできるのか不安でした。
でも、台本を読んだとき「自分の子供が突然いなくなったらどうしますか?」というシンプルな親心がテーマの中心にあったので、それだったらできるかな、と思いました。
――母という立場で早紀江さんがつきつけられた現実をどう捉えましたか。
本当に怖くて苦しくて悲しいことだと思います。自分に置き換えて想像したこともないし、想像したくもないことです。
――早紀江さんに抱いていた印象と演じてみて変わったことは?
報道番組で見ていた早紀江さんには、とても強い方だなという印象がありました。
インタビューにも毅然と答えていらして。そこが、自分が演じる上で壁になるかなと思ったのですが、プロデューサーさんとも話して思ったのは、早紀江さんは実際は強いわけではなくて、普通のお母さんなんだ、と。
そんな普通のお母さんがあそこまで人々に強い印象を与えるほど頑張らなくてはならないのか、という意味を皆さんに考えていただくきっかけになればと思います。
皆さんの知っている早紀江さんのイメージを見せたいなと思いつつも、家庭にいるシーンでは皆さんが知らないような普通のお母さんでいるところをしっかりお見せしたいです。
――印象的なシーンや難しかった点があれば教えてください。
お父さん(滋さん)とのシーンで、早紀江さんのすごく弱い部分、不安な部分、怖い部分をお父さんにぶつけているんですね。本当に泣いてばかりのお母さんで、お父さんがいなかったら進めないような道を選ぶというシーンは印象的でした。
また、拉致被害者が帰ってきた羽田空港のシーンは自分の娘がいないタラップをみつめるカットは難しかったです。監督から“普通のドラマのように小さな感情の出し方では伝わらない”と言われました。
ドキュメンタリードラマでは実際の映像の迫力が強いので、ドラマ部分は普通のドラマよりもポンポンと感情を上げていかないと生の映像に負けてしまう、と。そこは監督から指導いただきながら意識しました。
――早紀江さんの20代から現代まで長い期間を演じる上で工夫などは?
ウィッグをつけて白髪にしたり、しわを描いてみたり…プロの力を借りて変えていました。時代がどんどん進んでいくので気持ちを追いつかせていくのは大変でした。
――読者にメッセージをお願いします。
自分の子供が突然いなくなったらどうなるか?皆さんも共感して見ていただけると思います。それが歴史的な事件と絡んでいく様子を見守っていただければと思います。
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