田中れいな、悪の華を咲かせた圧倒的2.5次元力!「さあ、跪きなさい!」

2019/04/08 17:30 配信

アイドル

それぞれの感情・物語が交錯した歌唱パート


初演との比較は栓無きことだが、初演を記憶していると、田中の表情の入れ方、台詞へのタメの入れ方、強弱でのニュアンスの伝え方など、「お!」と気付く部分も随所にある。「変えていこう」というよりも、2年の間に増した芝居への向上心、努力が生んだ変化なのだろう。

そして、何より初演を超えてきたのはミュージカルの核である歌唱パートだ。切れの良い発声が印象的な「悪ノ娘」の高揚感。感情深く歌い上げる「リグレットメッセージ」。田中の歌唱力は相変わらず素晴らしく、今回さらに増した歌の突き刺さりと共に、歌詞をかみ締める表情にも引き込まれていく。

田中れいなの歌声はとにかく音の切れがよく、歌詞がとても聴こえやすい。ライブとはまた違った歌の魅力を届けてくれる


歌詞をかみ締めると言えば、星波による「悪ノ召使」も同様で、この曲に込められたリリアンヌに向けるアレンの感情を、葛藤と切なさの募る歌声で紡いでいく。ここで涙を誘われる方も多いのではないかと思う。また、田中との掛け合いになる「孤独ノ王女」では、手を伸ばそうとするが、それができない、リリアンヌとアレンの心の距離感を悲哀の芝居と共に見せてくれた。

さらに、元SUPER☆GiRL でミュージカル経験も豊富な宮崎理奈、シンガーソングライターのyucat、元チャオ ベッラ チンクエッティのメインボーカル・橋本愛奈といった実力のある歌い手たちがメインキャストに並び、彼女たちの歌声は歌唱パートに大きな厚みを作り出している。

約2時間10分のドラマだが、暗転がなく、小気味良いテンポで進んでいくのであっという間の気分。舞台・ミュージカルはちょっと苦手という人にも楽しみやすい作品だ


もちろん、ここでは書き切れない青の国の王子・カイル役の谷佳樹、革命の女剣士・ジェルメイヌ役の護あさな、リリアンヌの男前な愛馬・ジョセフィーヌ役の前田隆太朗ら、全ての役者が作り上げたからこその新しい「悪ノ娘」である。彼らの見どころは物語の結末につながるためここでの言及は控えるが、ファンであればその姿をぜひ見届けに向かってもらいたいところだ。

文・撮影:鈴木康道