――若き日の古今亭志ん生を演じる上で、役作りはどのようにしていきましたか?
最初は、とにかく文献を読みました。でも、残っているラジオの音源やテレビの映像の資料は晩年のものなんですよね。だから、戦前の志ん生についてはあまり分からなくて。
ご自身で語ってる資料などはあるんですが、噺家なのでちょっとずつ話を盛ってるんですよ。自分が名前を変えた回数とか、自分の生まれた年とか、なんだったら自分の母親の名前とかも話すごとにまちまちだったりするんです(笑)。
架空と史実の間の人のように感じていました。
僕が年を取ったらたけしさんになるということも、どう考えていいのかさっぱり分からなくて(笑)。たけしさんに寄せた方がいいのかと悩んだりもしました。
それで、たけしさんが撮影されているところを見学しに行ったんです。そしたら、髪の毛は金髪だし、思った以上にたけしさんはたけしさんで。それを見て「ああ、もう悩まなくていいのかな」って思えました。
志ん生の破天荒な生活ぶりについては文献に書いてあることもあったので、参考にしつつも、とにかく楽しくやらせてもらってるって感じです。一個一個の彼のエピソードがはちゃめちゃなので。
――たけしさんからは、何かアドバイスなどがあったんでしょうか。
物語の中では全然接点がないので、なかなかスタジオとかでお話をする機会はないです。
でも、一度だけたけしさんとぐっと近づく回があって、そこで初めて撮影を一緒にさせていただいたんですけど、たけしさんはずっと楽屋に戻らずモニターの前で座っていらっしゃいました。
物静かなんですけど、気軽にしゃべってくれる人で、「古今亭の雰囲気はあったかくていいよね」とおっしゃってました。
たけしさんは、本当に“芸を持った人”という意味の芸人さんなんだなと思いますね。高座に上がるということをちゃんと理解されていて、撮影前に小噺を用意していらっしゃるそうなんです。
僕は覚えたことを高座でやるということしかできないんですけど、彼はエキストラの人たちの表情をとるためにその小噺をやるんですよね。それはすごいなと思います。
大根さん演出の回では、たけしさんは一切撮らずに、長回しでたけしさんの小噺を聞いてる観客を撮ってたことがありました。大根さんがたけしさんに、「なんでもいいんでしゃべってください」って指示してたみたいで。
それをさせる大根さんもすごいなと思いましたし、要求に応えてるたけしさんもすごいと思いました。
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