■文=ミヤザキタケル:長野県出身。1986年生まれ。映画アドバイザーとして、映画サイトへの寄稿・ラジオ・web番組・イベントなどに多数出演。『GO』『ファイト・クラブ』『男はつらいよ』とウディ・アレン作品がバイブル。
映画アドバイザー・ミヤザキタケルがおすすめの映画を1本厳選して紹介すると同時に、あわせて観るとさらに楽しめる「もう1本」を紹介するシネマ・マリアージュ。
第2回となる今回は、ともに実話ベースの作品であり、何かしらのハンディを背負った者たちの物語であり、僕たちと同じこの現実を生きる人間だと信じられるからこそ得られる確かな勇気を描いた『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』と『ボストン ストロング~ダメな僕だから英雄になれた~』をマリアージュ。
モード・ルイスという女性画家の存在をあなたはご存じだろうか。
1903年にカナダのサウス・オハイオで生まれ、若年性関節リウマチを患いながらも独学で学んだ絵を描き続け、週刊誌に取り上げられたことを機に広く名が知れ渡り、後に米大統領となるリチャード・ニクソンからも絵の依頼を受けたというカナダで最も有名な画家の一人である。そんなモードの半生を演じるのは『シェイプ・オブ・ウォーター』('17)のサリー・ホーキンス。彼女の夫となるエヴェレットを『6才のボクが、大人になるまで。』('14)のイーサン・ホークが演じ、極上の人間ドラマを紡ぎ出す。
僕自身、何となくモード・ルイスの名を聞いたことがある程度で半端な知識しか持ち合わせていなかったのだが、たとえ彼女の存在を知らずとも本作は楽しめる。モードの絵に懸ける情熱やエヴェレットとのつながりを通し、たったひとりでも誰かに必要とされることの喜びを感じさせてくれるはず。
また、成功した者のエピソードなど、しょせん他人事でしかなく寄り添えないこともしばしばあるが、この作品は違う。社会的弱者が懸命に生き、この世界で己の価値や存在意義を見いだしていく勇気の実話。サクセス・ストーリーなどという枠組みには収まらない。今日を耐え抜くことで精一杯な人に、明日を生きていくための希望を指し示してくれる作品です。
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