のっけから極論を言うと、ハリウッドのスターシステムは崩壊した。華やかなハリウッド・スターを目当てに映画館に観客が押し寄せる――という時代は確かにあったのだが、21世紀のこの時代に“メガヒット間違いなしのマネーメイキングスター”という存在はもはや神話に近い。
しかし、スター不在と言われる時代にあってもなお、まだまだスターとしての存在感を失わず、それぞれのスター街道を突き進んでいるベテランたちがいる。WOWOWが「ハリウッド・スター特集」を開催するこの機会に、そんなスターたちの現在地を確認してみたい。
さて、最初に取り上げるのはブラッド・ピット。筆者は仕事で多くのスターを肉眼で見てきたが、私見を述べるとブラッド・ピットが一番カッコいい。もちろんハンサムなのは誰もが知っているが、生身の立ち姿がとんでもなくカッコいいのだ。
正直ブラピのキャリアは、そのルックスによって見出され、ルックス以上のものを証明する闘いだったと言える。『レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い』('94)や『セブン・イヤーズ・イン・チベット』('97)ではあまりにも美貌が取り沙汰され、『スリーパーズ』('96)、『デビル』('97)といったドラマ作品で演技力をアピールし、ガイ・リッチー監督の『スナッチ』('00)では粗暴な汚れ役を喜々として演じて見せた。
とびきりの異色作なのが、デヴィッド・フィンチャー監督によるヒューマン・ファンタジー『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』('08)。ブラピは老人の姿で生まれ、歳を取るにしたがって赤子に近づいていくという現実離れした人物を妙演。この作品で人生のあらゆる時代を演じたことで、ブラピは“美貌”という名のある種の呪いから解放されたのかもしれない。
そして、そんな葛藤などどこ吹く風とばかりにリラックスした姿を見せてくれるのが「オーシャンズ」3部作('01~'07)。このシリーズはジョージ・クルーニーを筆頭にビッグ・スターが集結していて、ブラピは「いつも食べ物をパクついている有能な参謀」という役どころを力むことなく演じている。肩肘張らずに楽しんでいるだけで魅力的なスターのオーラを味わうには最高のシリーズではないだろうか。
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