若くして演技力が認められ、アカデミー賞を受賞したにもかかわらず、近年はほぼ“B級”のアクション/SF/コメディ専門なのがニコラス・ケイジ、通称ニコケイ。ニコケイの代表作といえば第43回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた『ワイルド・アット・ハート』('90)や前述のオスカー獲得作『リービング・ラスベガス』('95)ということになるが、我々の記憶に刻まれているのは、狂気の形相で楽しそうに血まみれになっているような、ブッ飛んだ姿ではないだろうか。
『マッド・ダディ』('17)では謎のウイルスに侵されて、突然家族を惨殺しようとする家族思いのパパの役。『ダークサイド』('18)は、子供を亡くした夫婦がモーテル経営で心機一転を図るのだが、買ったモーテルはなんと「変態さんの館だった!」という背徳スリラー。『ヒューマン・ハンター』('17)は、管理社会の近未来を描いたディストピアSFと、とにかく“ジャンル映画”が多いのがニコケイの特徴だ。
巨匠フランシス・フォード・コッポラを叔父に持つ名門芸能一家の出身で、一時はハリウッドを担う演技派としての将来を嘱望されていたニコケイだが、私生活ではマンガやカンフー映画や怪獣映画、ロックンロールが大好きなボンクラ系。傍目には節操なくB級映画に出散らかしているようにも見えるが、本人にしてみれば存分に“自分らしさ”を発揮しているだけなのかもしれない。
1971年生まれ。雑誌、ウェブ、劇場パンフレット等に映画評やインタビュー記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。
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