――宮本さんは2005年に「太平洋序曲」が第59回トニー賞4部門にノミネートされました。その時はどのようなお気持ちだったのでしょうか?
実はトニー賞をそこまで意識していたわけではありませんでした。正直、ノミネートされた時も「えっ!? ノミネートされたの?」という驚きでした。結局、受賞は逃したものの、その時にブロードウェイにはノミネートされている人だらけだということが分かったんです。名作を飛ばしていたり、著名だったりする人も受賞は難しい。5回、6回ノミネートと多くの経験を積んでいて、やっと受賞した人も少なくない。それだけ、しのぎを削っているというすごみがあるんです。
それに賞は良くできているだけでは取れない。賞を取る作品というのは、その時代にピタッとくるものなんです。アメリカ人だけではない、世界中の人たちが今、感じたいことがひしひしと伝わって感動を呼ぶ作品が受賞するんです。ある時は単に楽しいだけではない、苦みだったり、過酷な現実を見つめたりしながら、エンターテインメントで表現する。そんな作品が受賞すると、ブロードウェイの幅の広さ、奥深さを感じ、唸ります。
また、経験して分かったことに、ブロードウェイ、トニー賞の壁の厚さもあります。
クリエーターたちはみんなお互いを知っているし、徹底的に学び合っている。そんなことも知って、これからますます受賞に向かって本気で作品を作っていきたいと思うようになりました。まさに、やる気を起こさせてくれた場所なんです。
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