――今年のノミネートのラインナップを見ていかがですか?
それぞれに違うメッセージを持った、違うスタイルの作品が並んでいるなと思いました。色々な意味で、トランプ政権になってから作品のエネルギーが増していると感じました。ある反発なのかもしれません。人のあり方、共存の仕方をこう考えるといった政治的な意味合いも入っていて、今こそ自分たちが感動を通じて表現しておかなければというような、熱い思いが出ている作品もありました。
――今年のノミネート作品で、宮本さんが注目されている作品を1本あげるとすれば?
去年はどちらかというと楽しい作品が多かったんですが、今回は一段とバラバラ。その中で僕が特に興奮したのは、ミュージカル作品賞にノミネートされている“Hadestown”(「ハデスタウン」)です。
これは実に面白い神話を元に、ある男女のジャーニーを描いています。一回観たらあまりにも面白く、次の日もどうしても観たくなって、他の作品をキャンセルしてチケットを買いました。たった3日の滞在で、これしか観ていないというほど魅せられた作品です。舞台はシンプルだが意味が深く、ギリシア神話を元にしていて、今のアメリカ人、いや世界の人に見てほしい作品だと思いました。
我々はどこに向かうのか?芸術とは何の意味があるんだろう?愛するということは?といったテーマが描かれ、音楽もジャズ、フォーク、それにアバンギャルド性もあって、ゾクゾクっとしました。最後には「ああ、いいものを観たな」「生きていると、こういう作品と出会えることがしあわせなんだ」と思って、ウルウルしていました。人が愛おしくなるすばらしい作品です。
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