2017年、俳優・豊原功補が企画、脚本、演出、主演の4役に挑戦し、好評を得た舞台の「名人長二」。落語と演劇を融合させた作品の第2弾「後家安とその妹」が5月25日(土)から上演される。
落語とのかかわり、今作への思いを豊原に語ってもらった。
「20歳の時に古今亭志ん生全集に出会ってからほぼ毎日のように聴いています。最近では柳家喬太郎さんや講談師の神田松之丞さんなどを聴きに行ったりしています。今作の原作者、三遊亭圓朝は江戸末期から明治に活躍した落語家ですが、海外の小説を落語化したり、新聞で長編を連載していたり、当時としてはアヴァンギャルドな活動をしていた人だと思います。今作の原題『鶴殺疾刃庖刀』(つるごろしねたばのほうちょう)、この文字の並びにまずひかれ、この話を志ん生が「後家安とその妹」と題して抜き読みにしているのを聴いたことがきっかけでしょうか」。
この2つの名作、しかも古典作品を脚本としてまとめるのはかなり苦労したもよう。
「まず、原作を読むだけでも大変なんです(笑)。漢字だらけの昔の文体、そして登場人物が60人くらい出てくるんです。それを読み解き、次に志ん生の音源を聞いて書き写し、それらを原案とし物語を構成し直すので、時間も手間も本当にかかります。なぜ自分はこの題材を選んでしまったのか、自分で自分を恨みながらもこの物語と向き合いました」。
あらん限りの力が注がれた今作の主演は毎熊克哉。NHK朝ドラ「まんぷく」での演技が印象的だった毎熊だが、豊原は2016年公開の映画「ケンとカズ」で彼の素質を見出していた。
「不良性の中に品を感じさせる姿は今回の主人公、後家安にぴったり重なりました。実際稽古場での姿勢を見て心根のキレイな俳優だなと思いました」。
白羽の矢が立った毎熊の意気込みはいかに?
「たくさんある中の1つではなくて、これが最後の舞台になるかもしれないという思いで挑んでいます。稽古の時間を共にする中で、豊原さんの事が好きになりました。豊原さんの思い描く世界に身を投じて、いろんな意味で、全員で大勝利をおさめたいです。実は落語との接点はほとんどなかったんです。が、今回の舞台がきっかけで聴くようになりました。座って話しているだけで、人に想像力を与えたり楽しませたりするのは並大抵のスキルではできない事なんだろうなと感じます。今回はその話に登場する人物を体現しなくてはならないので、落語の演目に負けないように!と思っています」。
毎熊から見た豊原の印象を聞いてみた。
「稽古が始まる以前と今では印象が変わって、とても繊細な方なんだなと思いました。演出ではかなり言葉を選んで発信されている印象がありますし、そうかと思えば情熱的にやる時もあるし、少年のようにニコニコしていたりと、魅力的な方です」。
本番を直前に控えた今、落語と演劇の融合作品に手ごたえを十分に感じているという豊原。
「前回よりも演劇的要素や躍動感は強くなっていると思います。今作以上の面白い題材を見つけたら今後もまたチャレンジするかもしれません。
人間の持つ負の要因や、失うことのない動物的欲求を“なんでもねえよ”と笑い飛ばせるのが落語です。それは普遍的なものだと思うので、遠い昔の話だと思わずに身近なものとして感じていただければ誰でも楽しめると思います」。
公演は新宿・紀伊國屋ホールにて5月25日(土)から6月4日(火)まで。
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